【人事担当者向け】退社手続きの手順まとめ

退職手続きの手順とマニュアル

【人事担当者向け】入社手続きの手順まとめ

従業員が退職する際、会社側は雇用保険・社会保険・所得税・住民税等、様々な手続きを進める必要があります。用意しなければならない書類も複数あり、手続きによって期日が異なるため、知識とスムーズな対応が求められます。

この記事では、従業員が退職する際に必要な会社側の手続きを詳しく解説しています。

効率化につながるヒントもあるので、ぜひ参考にしてください。

会社側が行う主な退職手続きの内容

従業員の退職に伴い、会社側が行う一般的な対応や手続きには、下記のようなものがあります。

≪退職日までに行う対応≫

  • 退職日の決定
  • 退職(願)届の受理
  • 退職者に対する必要な手続きの説明
  • 退職金支給準備
  • 関係書類の準備
  • 返却物の返却と回収

≪退職日後に行う対応≫

  • 社会保険・雇用保険・税金の手続き
  • 源泉徴収票・離職票などの送付

退職が決まってから実際に従業員が退職するまでの期間を就業規則で定めている企業もありますが、基本的には雇用期間の定めのない雇用契約の従業員は、いつでも退職の申し入れをすることが可能です。

また、退職(願)届を企業が受理しなかった場合も、本人の意思表示から最短2週間で効力を生じるため(民法第627条第1項)、短期間で手続きを終えなければならないケースもあります。

どのケースにもスムーズに対応できるように、担当者は手続きの流れを認識しましょう。

従業員の退職日までの主な手続き

①退職(願)届の受理、退職日の決定(~1カ月前)

従業員から退職の申し出があったら、退職日を相談し、退職(願)届を提出してもらいます。

雇用保険の手続きの際に、退職理由の記入が必須になっていますし、退職の理由が自己都合なのか、会社都合なのかにより、退職金の支給や雇用保険の失業給付を受けるタイミングにかかわってくるため、必ず提出してもらいましょう。

退職日は、「引き継ぎ期間」や「後任者」「人員補充の必要性」などを踏まえた上で、決定しましょう。他の従業員に混乱が起きないよう、年次有給休暇の取得期間についても十分話し合った上で決めることが重要です。

また年次有給休暇は、例外的に買取が認められる場合もあります。その内容は以下の3つの有給休暇です。

  • 法律で定められた日数を上回る有給休暇
  • 退職時に残っている有給休暇
  • 時効になった有給休暇

退職日までに有給休暇を取得せず、買い取りを求められた場合は、退職者と相談して買い取り額を決定しましょう。

②退職時誓約書の締結(~2週間前)

退職に伴い、秘密保持や競業避止などを約束する「退職時誓約書」を取り交わしておくとよいでしょう。締結時は、会社側から内容について説明し、退職する従業員の署名・捺印をもって締結しましょう。

③退職手続きの説明(~2週間前)

退職に伴うさまざまな手続きについて、従業員本人に説明を行います。

併せて、従業員本人に確認するべき項目もあるので、以下を確認して対応しましょう。

  1. 健康保険の任意継続の意思確認
  2. 住民税の徴収方法の確認
  3. 退職証明書・離職証明書の必要有無の確認
  4. 退職所得の受給に関する申告書への記入(退職金を支給する場合)

退職日までに2カ月以上継続して被保険者期間がある退職者は、健康保険の「任意継続制度」により2年間を限度に制度を利用できます。任意継続を希望する場合は、従業員本人が退職日の翌日から20日以内に健康保険組合または全国健康保険協会に加入申請を行うことが必要です。ただし、保険料が全額退職者の自己負担になるため、併せて事前に説明しておくとよいでしょう。

住民税の支払い方法には、企業が従業員から源泉徴収して納付する「特別徴収」と、個人が支払う「普通徴収」等があります。退職後すぐに他の企業で給与を受けることが決まっている場合は「特別徴収」、そうでない場合は「普通徴収」とするのが一般的です。納付方法によって会社側で必要な手続きが異なるため、事前に確認しておきましょう。  

④従業員から各種書類、データを回収する(~退職日)

退職時には、従業員から以下のものを回収してもらいましょう。

  • 健康保険証
  • 会社からの貸与品
  • 社員証
  • 名刺
  • 顧客情報や事業に関わる資料やデータ

健康保険証は本人だけでなく、扶養家族の分も回収します。貸与品や社員証など、会社の経費で発行したものも、全て回収対象になります。特に事業に関わる資料やデータは機密情報が含まれている場合もあるので、漏れがないよう全て回収しましょう。

⑤保管書類の有無を確認する(~退職日)

会社によっては、以下のものを会社で保管している場合もあるので、返却漏れがないよう確認しましょう。

  • 雇用保険被保険者証
  • 年金手帳

⑥退職証明書の準備(~退職日)

退職証明書は退職者が転職先から提出を求められる場合や、離職票が発行される前に社会保険の手続きを行いたい場合などに利用されます。必ずしも退職とともに用意しなければならないといった決まりはありませんが、従業員から退職証明書の発行を求められたら、会社は応じなければなりません。退職者が手続きを滞りなく行えるように、必要に応じて事前に用意しておくことが望ましいでしょう。

退職証明書に決まった様式はなく、企業の独自のフォーマットでの作成が可能ですが、「使用期間」「業務の種類」「その事業における地位」「賃金」「退職の事由」を退職証明書に記載しなければならないという決まりが法的に定められているため、注意しましょう。また、退職証明書には労働者が請求した項目以外を記載してはならないとも定められています(労働基準法第22条第3項)。

⑦離職証明書の準備(~退職日)

離職証明書はハローワークが退職者に交付する「離職票」の基になる書類です。離職票は、失業給付を受ける場合に必要となりますが、すでに再就職先が決まっている等、従業員が離職票の交付を希望しない場合には、離職証明書の作成は不要です。ただし、退職する従業員が59歳以上の場合は、本人の希望の有無にかかわらず、離職票の交付が義務付けられているため、離職証明書の発行が必要になります。

⑧退職金支給準備・支給(~退職日)

退職に伴い退職金などの退職手当を支給する場合は、従業員本人に「退職所得の受給に関する申告書」を提出してもらいます。この申告書は、退職金から税額を控除する際に必要となる書類です。申告書の提出の有無によって、源泉徴収額が異なるため、提出忘れがないように注意を促しましょう。

退職する従業員から申告書を受け取ったら、就業規則に則って速やかに退職金の金額を計算します。退職手当は給与等とは別に源泉徴収する必要があるため、その額を差し引いて退職日までに支払いましょう。併せて退職手当に係る源泉徴収票の発行も必要です。

退職日以降に必要な手続きと必要書類

①社会保険(健康保険・厚生年金)の手続き(退職の翌日から5日以内)

≪提出期日≫

  • 退職後5日以内

≪提出物≫

  • 健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届
    ※在職中に70歳以上に到達した従業員の手続きには、専用の様式が必要
  • 従業員と扶養家族の健康保険証
    ※健康保険証を回収できない場合は、「被保険者証回収不能届」の添付が必要

≪提出先≫

  • 管轄の年金事務所

≪提出方法≫

  • 郵送
  • 窓口への持参
  • 電子申請

社会保険の支払いは、資格喪失日の前月までです。そのため給料の締め日によっては、1か月ほど多く保険料を控除する必要があります。例えば3月25日に退職した場合は2月分までが控除されますが、3月31日に退職した場合は3月分の保険料控除が必要です。

また、健康保険被保険者資格喪失届を提出すると、「健康保険被保険者資格喪失確認通知書」が発行されます。この通知書は、退職者が退職後に保険の切り替えをするために必要となる書類なので、健康保険被保険者資格喪失確認通知書が会社に届いたら速やかに、退職した従業員に送付しましょう。

ただし、退職者が一般企業に就職する場合は、後述にある離職票で事足りるため、退職後に必要になることはありません。離職票と同じく、本人の希望がある場合に発行する書類です。

②雇用保険の手続き(退職の翌々日から10日以内)

雇用保険に加入していた従業員が退職した際は、雇用保険の喪失手続きが必要です。

≪提出期日≫

  • 退職後10日以内

≪提出物≫

  • 雇用保険被保険者資格喪失届
  • 雇用保険被保険者離職証明書
    ※離職の日以前の賃金支払状況などを確認できる書類(出勤簿、賃金台帳)、退職理由を証明するための書類(退職届)の添付が必要

≪提出先≫

  • 管轄のハローワーク

「雇用保険被保険者離職証明書」は、ハローワークが請求した雇用保険の失業給付金額を決定するのに必要な書類です。また退職者には、失業給付をハローワークで請求するために「離職票」を渡します。

再就職することが決まっている場合や、従業者からの求めがない場合は、失業給付に関わる手続きを行う必要はありませんが、従業員から求められた場合や、従業員が59歳以上の場合は失業給付の手続きが必要になります。

☆離職票とは☆

「離職票」とは退職者が失業手当を申請する際に必要な書類のことで、退職者自身がハローワークへ行き、提出します。

離職票は「離職票1」と「離職票2」の2枚組です。

☆離職票1☆

雇用保険資格喪失通知書を兼ねたものであり、氏名・マイナンバー・給付金の振込先などを退職者自身が記入します。

☆離職票2☆

こちらは会社が記入するものであり、左半分には退職者氏名、住所、被保険者番号、会社の事業所番号、所在地などを、右半分には退職理由を記入します。

退職者が59歳以上または本人が希望した際に発行しますが、本人から希望があったにもかかわらず発行しなかった場合は労働基準法違反になるので注意が必要です。

③住民税の手続き(翌月10日まで)

≪提出期日≫

  • 退職日の翌月10日まで

≪提出物≫

  • 給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書

≪提出先≫

  • 退職者が退職時に居住している区市町村役場

住民税の手続きは、退職する時期によっても対応が変わるため注意が必要です。

☆6月1日~12月31日退職の場合☆

最後の給料や退職金から「普通徴収」に切り替えますが、従業員本人から申し出があれば「一括徴収」でも問題ありません。

☆1月1日~4月30日退職の場合☆

最後に支払った給料や退職金から「一括徴収」となりますが、給与と退職金などが少額で一括徴収できない場合は「普通徴収」にすることも可能です。

☆退職日が5月中の場合☆

住民税の残額は5月分のみになるため、通常通り、最終給与から特別徴収として処理されます。

⑥源泉徴収票の発行・送付(退職から1カ月以内)

退職日から1カ月以内に、退職した年の1月1日から最終支払給与までの額で、源泉徴収票を発行します。

退職した従業員が同年中に新たな職に就く場合は、新たな就職先がその収入を合算し、年末調整を行います。その際は、退職する従業員に対して、就職先に源泉徴収票を提出する必要がある旨を伝えましょう。また、同年中に再就職しない場合は、年末調整がされずに源泉徴収された所得税の合計額に過不足が発生しているため、確定申告の手続きが必要になる旨を伝えましょう。

【ケース別】退職手続きで注意したいこと

退職手続きで注意しなければならないことを、ケース別にご紹介します。

①パートやアルバイトの場合

パートやアルバイトといった非正規雇用の従業員の場合も、退職手続きの基本的な内容や方法は正社員と同じです。ただし、社会保険に加入していない場合や納税していない場合など、従業員個々の状況によって必要な対応が変わります。社会保険の加入有無や、納税の有無などを確認した上で、手続きを行っていきましょう。

②派遣社員の場合

派遣社員は、派遣先ではなく、派遣元の派遣会社と雇用契約を結んでいるため、派遣社員の退職手続きは派遣会社が行います。派遣先の会社が直接手続きを行うことはありませんが、退職後の業務が滞りなく進むよう、派遣社員が担っていた業務の引き継ぎ方法を検討する等、業務面での調整は必要になります。

③技能実習生など外国人の場合

退職の手続きは、原則日本人と同じですが、「外交」「公用」以外の在留資格を持つ外国人のみに必要な手続きとして、ハローワークへの外国人雇用状況の届出の提出があります。また、1年以上雇用保険に加入している場合は失業保険の給付対象となるため、日本人と同様に「離職票」の交付も必要になります。

④65歳や70歳以上の高年齢者の退職手続きをする場合

高年齢の従業員の場合も、退職手続きは一般的な手続きと同じですが、退職後の生活に不安を持つ方もいるため、丁寧な説明が必要になるでしょう。

☆健康保険について☆

退職後に再就職を行う場合の健康保険の手続きは従来通りの手続きを行います。一方、再就職をしない場合や再就職先が健康保険適用事業所でない場合は、「健康保険に加入している家族の被扶養者になる」「任意継続被保険者として全国健康保険協会や健康保険組合に加入する」「国民健康保険に加入する」のいずれかを選択することになります。選択によって必要な手続きも異なるため、それぞれの場合に応じた説明が必要です。

☆厚生年金保険について☆

70歳以上の従業員が退職した場合は、「厚生年金保険70歳以上被用者不該当届」を退職日の翌日から5日以内に企業の所在地を管轄している年金事務所に提出します。

☆雇用保険について☆

2017年1月より、65歳以上の方も「高年齢被保険者」として雇用保険の適用対象になりました。高年齢被保険者として退職する従業員が再就職を希望している場合、受給要件を満たせば、年金と併給が可能な「高年齢求職者給付金」を受けられます。

なお、給付金を受けるには、離職後に住居地管轄のハローワークへ求職の申し込みをした上で、以下の受給資格の決定を受ける必要があるので注意しましょう。

  • 既に離職していること
  • 積極的に就職する意思があり、いつでも就職できる状態ではあるが仕事が見つからない状態にあること
  • 離職前1年間に雇用保険に加入していた期間が通算6カ月以上あること

退職に伴う手続きが遅れると、どのような問題がある?

退職手続きが遅れると、会社側には「納付する必要のない社会保険を納付しなければならない」「本来利用できない被保険者証で間違って給付が発生してしまい、事後精算が必要になる」などの不利益が生じる可能性があります。一方、従業員にとっても失業給付の受給開始が遅れたり、受給できる総額が減ってしまったりすることが考えられます。退職手続きの遅れは、双方にとってデメリットが大きいため、滞りなく手続きを進めていきましょう。

退職代行業者から連絡があった場合

退職代行とは、退職意志の伝達やその後の手続きを従業員に代わって行うサービスです。退職代行から従業員の退職に関する連絡を受けた場合も、基本的に会社側から従業員の退職を拒否することはできず、円満な退職に向けて手続きを行うことになります。その場合、代行者によって対応できる業務が異なるため、代行者の職業を確認し、権限や合法性を確認することが必要です。

退職代行を利用する従業員は、パワハラやセクハラなど、会社との間に何らかのトラブルを抱えている場合もあるため、個別のケースに応じた対応が必要となります。また、退職代行を利用するケースでは、退職までの期間に本人が勤務しない場合も十分に想定されるので、業務の引き継ぎや周囲への影響に配慮する必要があることにも注意が必要です。

まとめ

従業員の退職が決まったら、担当者は退職までの期間の中で、各種手続きを的確に行わなければなりません。退職する従業員の意向や退職後の状況によって必要な手続きが異なる場合もあるため、従業員の意思や状況を確認しながら進めることが大切です。

また、退職の種類や雇用形態などによっても、必要な手続きが異なるため、就業規則をはじめとする規則の確認も大切です。一つずつ丁寧に確認しながら退職手続きを滞りなく進めましょう。

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