【リスキリングVol.4】リスキリングの事例とリスキリングを成功させる5つのコツとは

国内外を問わずさまざまな企業で注目されているリスキリングは、ビジネスモデルや技術革新などの変化に対応するため技術やスキルの習得が目的です。近年、多くの企業がリスキリングを導入しているものの、どのように取り組むべきか課題を抱えている企業も多いでしょう。

この記事では、リスキリングを導入した企業の事例を紹介するとともに、リスキリングの必要性と成功させるコツを解説します。

リスキリングの必要性

経済産業省は、リスキリングについて「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。企業がリスキリングを導入すれば、以下のようなメリットがあります。

  • 人材不足への対応が可能になる
  • 自立型人材の増加する
  • 社内業務に精通した人材が新規業務に取り組める
  • エンゲージメントの向上する

デジタル人材をはじめとする専門職は、大幅な人材不足が予測されています。不足している人材をすべて外部雇用するのは難しい状況でしょう。このような背景もあり、厚生労働省が新たにリスキリング支援コースを設置するなど、リスキリングは国内でも注力されています。

参照:リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―

日本企業におけるリスキリングの事例

DX推進のともない新たな知識やスキルが必要とされるなか、多くの日本企業がリスキリングを導入して従業員のスキルアップを図っています。ここでは、日本の企業が実施しているリスキリングの事例を紹介します。

富士通株式会社

2019年に時田社長が就任した際「IT企業からDX企業へ」と社内外に発信し、企業変革の施策としてリスキリングを実施しました。学びのプラットフォーム「Fujitsu Learning Experience(FLX)」上で、最新のDXテクノロジーからコンピューティング、AIなど個々の関心にあわせて受講ができます。

企業として、リスキリングの実践を通し「社員が相互に人材の力を最大限に引き出して活かしあい、人材に生かされている企業」を目標にしています。

参照:富士通の事例に見るリスキリング推進の理由

株式会社日立製作所

「デジタル対応力を持つ人材の強化」を課題に掲げ、国内のグループ企業にDX研修を実施しています。グループ会社である日立アカデミーと協力して会社独自の学習教材を開発し、数多くのカリキュラムから学習できるのが特徴です。

日立製作所のリスキリングは、集合研修のほか、ネット環境があればいつでもどこでも学習できるeラーニングも取り入れています。

参照:日立アカデミーのサービス

キヤノン株式会社

キヤノン株式会社は、リスキリングの一環として「Canon Institute of Software Technology(CIST)」を立ち上げ、職務転向の希望者に対して教育を実施しています。クラウド研修やAI研修のほか、デジタル知識が学習できるさまざまな講座を提供しています。

また、技術人材の育成にも力を入れており、機械・電気・光学・材料・ソフトウェアなど専門分野ごとの教育体系を整備しています。

参照:人材育成と成長支援 | キヤノングローバル

ダイキン工業株式会社

ダイキン工業株式会社は、DX人材確保のためにダイキン情報技術大学を設立してリスキリングを実施しました。リスキリングの導入は、競合他社との競争が激しくなり新規ビジネスモデルが必要になった背景があります。

毎年約100名の新入社員がDXについて学んでいます。受講期間は2年間で業務をせずに学びだけに集中できるうえ、給与も支給されるのが大きな特徴でしょう。

参照:AI分野の技術開発や事業開発を担う人材を育成する社内講座『ダイキン情報技術大学』を開講 

JFEスチール株式会社

JFEスチール株式会社は、社内でデータの扱いができる人材育成のためにリスキリングを実施しました。2017年から育成プログラムを実施して、2020年度末までに350人のデータサイエンティストを輩出した実績があります。また、2024年度末までに600人を育成する目標を掲げて、リスキリングを継続的に実施しています。

「JFE Digital Transformation Center」を開設し、初歩的なAIリテラシーから社外研修の参加など、それぞれに合ったリスキリングが行われているのが特徴です。

参照:DX推進拠点「JFE Digital Transformation Center」を開設|JFEスチール株式会社

海外企業におけるリスキリングの事例

海外においても多くの企業がリスキリングに取り組んでいます。デジタルスキルの全体的な底上げを目指している企業が多く、実践的なスキルを身につけるプログラムを取り入れています。ここからは、海外企業が実施しているリスキリングの事例を紹介します。

参照:アマゾン、ウォルマート、AT&T…従業員再教育に巨費を投じる海外企業の「リスキリング」 

Amazon

Amazonは、一人あたり約75万円を投資して、2025年までに10万人の従業員をリスキリングすると発表しました。本来であれば社内でスキルアップするのが効率的でしょう。しかし、学習が足りない部分を補うには自分で環境を整える必要があるとの考えから、従業員に対する負担をなくして学習ができるように金銭的なサポートを実施しました。

リスキリングの方法の1つとして、従業員が教育機関に入学してスキルを身につけ会社に還元するという体制が整っています。

Microsoft

Microsoftは、コロナで職を失った2500万人にリスキリング講座を無償で提供し、失業者の再就職を支援しました。これは、2020年6月にナデラCEOが自ら発表をした施策です。自社ソフトであるMicrosoft Teams上で教育コンテンツの視聴が可能になり、外部の教育プログラムにも接続できます。

AT&T

AT&Tは、リスキリングの先駆者として挙げられる企業の1つです。2008年時点で25万人いる従業員のうち半数以上が、未来の事業に必要なスキルを持っていない事実を把握していました。そこで、2013年から2020年までに10億ドルかけて10万人をリスキリングするプロジェクトを実施しました。

その結果、技術職の80%以上を社内の人材で充足したり、リスキリングを受けた従業員の多くが表彰を受けたりしています。また、離職率の低さもリスキリングの成果の1つとして挙げられます。

Walmart

Walmartは、社内研修にVRを用いています。全米の店舗にVRを導入し、イベントや自然災害などが起きても対応できるようなスキルが身につけられています。ほかにも、ソフトウェア開発やデータ分析など、技術職として活躍するためのカリキュラムを設置しています。

Walmartは、人材への投資を積極的に行っているのが特徴です。店舗従業員がスキルアップすれば、会社全体の成長につながると考えています。

リスキリングを成功させる5つのコツ

時代の流れに対応し、ビジネス社会で生き残るためにはリスキリングを成功させて必要なスキルを磨いていかなければなりません。しかし、現状に不安を感じながらもリスキリングに取り組む時間がない方もいるでしょう。また、失敗やストレスを避けてチャレンジできない方もいるのではないでしょうか。

ここからは、リスキリングを成功させるにはどのようなマインドやコツが必要か解説します。

①未来志向

世の中の動きを捉えて将来の方向性やキャリアアップを考える「未来志向」の方は、スキルを習得するために行動します。努力次第で自分の能力を成長させられる考えで、失敗しながらも学んでいこうという姿勢です。現状を変えて未来をより良くしたい「未来志向」を持っていれば、企業内でどのようなスキルが必要なのか明確になってくるでしょう。

②変化への適応力

デジタル化が進み、世の中は激しく変化しています。ビジネスシーンにおいては、急速に変化する世の中に対応できる力は不可欠です。会社のトップが変化に対応して適応していく姿勢でいても、従業員に変化への対応力がある人材がいなければ意味がありません。現状の仕事や職務を維持するのではなく、変化が必要だと従業員に感じさせる環境が大切です。

③学習能力

個人が新しいスキルを獲得するために計画を立て、それを理解・記憶・応用する学習能力はどの業務に就いても必要です。学習するだけでなく、習得した知識やスキルを業務に活かせる能力があるかも大きなポイントです。もちろん、個々の自主性も大切でしょう。しかし、学習サポートができる環境を整えておくのも企業の大切な仕事だといえます。

④モチベーションの維持

リスキリングによる知識やスキルの習得は、モチベーションの維持と継続力が求められます。好きな分野であればモチベーションは維持できます。しかし、成果に結びつけるには、個人の努力だけでなく、企業側の努力とリスキリングを完了するまでの継続力が必要でしょう。

⑤ストレス耐性

リスキリングは、学習していくためストレス耐性が重要です。新たに必要な知識やスキルの習得が必要であると理解していても、想像以上に取り組みが難しく挫折してしまうケースはよくあります。「わからない」に立ち向かう姿勢と困難な状況を乗り越えるストレス耐性を高めなければなりません。

リスキリング事例の形態

DX推進による業務の効率化や経営課題を解決するための施策として取り組まれているリスキリングは、どのような形態で行われているのでしょうか。ここでは、リスキリングの形態とそれぞれの特徴や利点を解説します。

オンライン研修

オンライン研修はZoomなどのWeb会議ツールを活用して、ライブ配信で行われる研修です。研修を受ける際は、通常業務の調整が負担になるケースもあります。しかし、オンライン研修であれば、オフィスや自宅など場所にとらわれずにどこにいても受講できるでしょう。

ほかにも、研修資料をデータ化すればコストが削減できるなどのメリットがあります。また、オンライン研修だけでなく、オフライン研修やeラーニングと組み合わせれば、より効率良く学習が可能です。

eラーニング

eラーニングは、録画した動画をインターネットを通じて受講する研修や講座をいいます。オンライン研修は時間が決まっていますが、eラーニングであれば好きな時間に研修を受けられるのがメリットといえるでしょう。また、同じ講座や研修を繰り返し受講できるのでスキルの定着につながります。

eラーニングは、学習の管理を各自でするため従業員の自主性が求められます。積極的に学習する方もいれば、そうでない方もいるでしょう。対策としては、定期的にオフライン研修を実施するなどが挙げられます。

ワークショップ

ワークショップは、講師と対面して実技やロールプレイなどの授業を受けられる特徴があります。グループに分かれてのプレゼンテーションや解決策の立案をするケースもあり、従業員間のコミュニケーションを活性化させることができるのがメリットです。

企業内大学・社内大学

企業内大学・社内大学は、社内に研修の場を提供する研修制度です。大学のような機能を持たせて専門部署を設立し、積極的に学習できる機会を設けています。なかには、大学と提携して一定期間は業務に就かず、学習に集中させる企業もあります。研修中であっても給与が支払われる利点があるので、スキルアップに集中できるでしょう。

また、自社の優秀な従業員を講師として採用すれば、実際の体験やノウハウをほかの従業員に伝えられます。デメリットとしては、コストがかかったりシステム構築が難しかったりなどが挙げられるでしょう。

まとめ

この記事では、リスキリングの事例の紹介や成功させるためのコツなどについて解説しました。国内外の企業で導入されているリスキリングは、従業員が新たな知識やスキルを獲得するために実施します。リスキリングを実施すれば、企業における人材不足の確保や、業務の効率化が期待できるます。

リスキリングの必要性を実感し導入したいけれど、どのように実施すればいいのかわからないと悩んでいる方もいるのではないでしょうか。株式会社キューズフルは、企業内研修における相談や助成金のサポートしています。リスキリングが気になる企業の皆様はぜひ一度資料請求してください。

企業研修ならお任せ!研修開催から補助金申請まで一括サポート