【リスキリングVol.7】リスキリングとスキルアップの違いは?必要性と身につけるべきスキルを解説

「リスキリング」とは、時代が変化していくなかで技術革新などの変化に対応するために、新しい知識やスキルを学ぶことです。知識やスキルを学ぶ場面においては「スキルアップ」など、リスキリングとよく似た言葉が使われます。しかし、どのような違いがあるのかわからない方も多いのではないでしょうか。

この記事では「リスキリング」と似た言葉の違いを解説するとともに、リスキリングの必要性などもお伝えします。

リスキリングと似た言葉の違い

ビジネスモデルの変化に対応するために、新しい知識やスキルを身につける「リスキリング」は、企業研修などの場面でよく取り上げられます。しかし「リスキリング」と「スキルアップ」など、よく似た言葉の違いがあいまいで、使い方や理解を間違えている方もいるでしょう。

ここからは、リスキリングとよく似た言葉の意味の違いを説明します。

スキルアップとは

「スキルアップしたい」と考える会社員や「社員をスキルアップさせたい」と考える企業の教育担当者は、どのような意味で「スキルアップ」を使っているのでしょうか。

ビジネスシーンにおける「スキルアップ」は、今現在の業務に活用している保有スキルを含め、訓練や勉強を通して、自分が持ちあわせていない能力を手に入れる意味があります。

「スキルアップ」は、ビジネスシーンに限らず、ほかの場面でもよく使われる言葉です。新しく資格取得を目指すなどを含め、広い範囲でとらえる必要があるでしょう。

アップスキリングとは

すでに持ちあわせているスキルとは別に、新たなスキルセットを再構築するのが「リスキリング」です。一方「アップスキリング」とは、すでに保有しているスキルの更新や強化・拡張を指します。

たとえば、ITエンジニアが新たな技術資格を取得したり、アップデートされたテクノロジーに対応したりするために学習するときは、リスキリングではなく「アップスキリング」を使います。

アウトスキリングとは

「アウトスキリング」とは、社外への転職を前提としたスキル教育の意味があります。「アウトスキリング」は、新型コロナウイルス感染症の拡大による経済の悪化をきっかけに、欧米で注目されるようになった背景があります。

人員整理の対象者に、デジタル分野などの成長企業への転職に役立つ教育を実施し、新しいキャリア形成を支援するのが「アウトスキリング」といえるでしょう。

リカレント教育とは

「リカレント教育」とは、社会人の学び直し教育ともいわれ、生涯にわたって教育と就労のサイクルを繰り返すことです。「回帰教育」「循環教育」ともいわれています。リカレント教育は離職や休職が前提にあるため、大学などで教育を受けるのが一般的です。

一度教育を終了した方が学ぶ内容のため、より専門的な知識を増やす教育といえるでしょう。技術者のリカレント教育には、AI、ロボット、情報処理が推進されるなど、さらなる社会参画のための趣旨に応じるのが「リカレント教育」です。

アンラーニングとは

「アンラーニング」とは、日本語にすると「学習棄却」です。既存の仕事のやり方や信念を棄却して、新しいスタイルを取り入れるといっていいでしょう。ビジネスモデルの変化が激しい時代に、今までの仕事の方法だけでは対応できません。

時代が変化していく状況によって、古いものを捨てる「アンラーニング」は、リスキリングの過程で必要性があるといえるでしょう。

リスキリングが必要な理由

ビジネスモデルの変化に応じて、教育の場面で使われる「リスキリング」は、スキルの再習得や学び直しを意味します。DX時代の人材戦略と世界の潮流から、リスキリングに注目し導入する企業は少なくありません。

しかし「リスキリングにはどのようなメリットがあるのか」など、疑問をもつ方もいるでしょう。ここでは、新たなスキルの獲得に焦点をおく「リスキリング」の必要性を解説します。

参照:リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流

業務の効率化

リスキリングで習得した技術は、DX推進に活用できます。仕事の自動化などが実現できれば業務の効率化につながり、残業の削減やワークライフバランスの実現が期待できるでしょう。また、DX推進のなかで削減できた時間は、中長期的な業務改善の取り組みに活用でき、既存事業の拡大や新規事業の開発につながります。

事業の拡大

リスキリングで新たに知識や技術を習得し、実践できる環境が整備できれば、新しい事業が生まれやすくなります。従業員の視野が広がり、革新的なアイデアが生まれる可能性もあるでしょう。たとえば、デジタル技術を習得し一緒に働く仲間と価値を共有できれば、チームとして開発意欲は向上します。

従業員の意欲が上がれば、個人の能力やスキルが向上し、企業の事業拡大につながります。ビジネスモデルや事業戦略も変化し、企業の成長が期待できます。

コストの削減

DX人材は専門性が高く、ほかの職種に比べて採用が困難です。しかし、リスキリングにより社内で人材育成ができれば、採用コストは大幅に削減できるでしょう。すでにいる従業員がDXスキルを習得すれば、専門性が上がり新たな人材を採用する必要はありません。

リスキリングにより、従業員の技術を業務に活用できる機会があれば、能力のある人材の離職も防げます。

アップスキルが必要な理由

アップスキルは、従業員がすでに保有しているスキルの更新や強化・拡張で、スキル向上を助長します。アップスキリングは、企業と従業員の両方に欠かせない戦力の1つかもしれません。なぜなら、新たな価値を生み出すスキルを再開発するためには、組織での取り組みが必要だからです。ここでは、企業内におけるアップスキリングの必要性を解説します。

市場変化に対応

DX時代において、市場の情報は膨大で流れるスピードも急速です。企業は、常に新しいものに迅速に対応していかなければなりません。現代社会の流れに乗り遅れるのは、企業の存続にも関わる大きな問題といえるでしょう。市場変化に対応するためにも、アップスキリングはあらゆる企業に求められ必要不可欠な教育です。

デジタル化の促進

企業のDX推進が加速すれば、アップスキリングは必然的です。AIの急成長でデジタル化が促進された背景もあり、ロボット技術などを取り入れた仕事の進め方は大きく変化していくでしょう。このような環境変化に対応するためにも、新たな知識やスキルを習得するアップスキリングは必要だと考えられます。

自律的な人材の育成

従業員1人ひとりが自分の役割を理解し、やるべき業務を遂行できる自律的な人材が増えれば、組織の生産性の質が高まります。個々の意識が向上しチーム全体の意欲が底上げできれば、仕事の生産性は大幅に向上するでしょう。

自分の価値観に基づいて判断し、行動して成果を出せる人材が企業には必要です。そのためのアップスキリングは組織の成長に重要な施策といえるでしょう。

急速に広がるリスキリング支援

政府は、企業や従業員のスキルアップを促し、日本企業と経済の成長を促す方針を示しています。リスキリングを進める個人や企業に対しての金銭的援助が充実してきたため、リスキリングを活用する企業は増加の傾向にあるでしょう。

ここでは、政府によるリスキリング支援にはどのようなものがあるか解説するとともに、リスキリング支援を受けられる条件を解説します。

政府によるリスキリング支援の動向

2022年10月に岸田首相が「企業のリスキリングに5年間で1兆円を投入して支援する」と表明しました。それにより、もともとあった人材開発支援助成金の制度に、2022年12月リスキリングに特化した支援コース(事業展開等リスキリング支援コース)が設置されました。

新規事業の立ち上げや、デジタル化に関するリスキリングが支援の対象です。この制度を活用して、リスキリングによる事業拡大を実現する企業は増えていくでしょう。

DX推進が浸透

リスキリング支援はDX推進が浸透してきた結果、必要とされる対策ともいえます。リスキリングに取り組めば、今まで一部の業務しかしていなかった方の能力が上がり、新たな業務も遂行できます。

リスキリングは、DX時代における業務の効率化ばかりではありません。従業員の意欲が向上すれば、新しいアイデアを生み出せる可能性が高まり企業の大きな成長につながるでしょう。

リスキリング支援を受ける条件

DXを推進するために、政府が設置した「事業展開等リスキリング支援コース」には給付条件があります。

  1. 助成対象とならない時間を除いた訓練時間数が10時間以上であること
  2. OFF-JT(企業の事業活動と区別して行われる訓練)であること
  3. 職務に関連した訓練であること

職務に関連した訓練とは、事業展開にあたり新たな分野の専門的知識や技能の習得を指します。また、事業展開しなくても企業内のDX化などを進めるにあたって、業務上必要となる専門的知識や技能の習得を指します。

参照:事業展開等リスキリング支援コース

リスキリングでアップすべきスキル

リスキリングの必要性が理解できても「リスキリングで何を学ぶべきか」「従業員に学んでもらうべきジャンルがわからない」方もいるのではないでしょうか。DX時代に対応する知識やスキルを積極的に取り入れて、企業側の人材確保につなげるためにもスキルの習得は必要です。ここからは、リスキリングで身につけるべきスキルを紹介します。

ITプロジェクトマネジメント

プロジェクトの成功に向けて、プロジェクトの推進を管理します。プロジェクトの進め方から進捗の管理、上層部やクライアントへの状況報告などです。パーソルイノベーション株式会社の「リスキリング調査レポート」によると、ITプロジェクトマネジメントがリスキリングの目的となるスキルの1位になっています。

参照:リスキリング調査レポート

データ活用

DXが急速に進む時代背景もあり、企業が保有するデータ量は膨大です。データを貯めるだけではなく、活用していかなければ価値はありません。しかし、データはいざ活用しようとしてもそのまま使えるわけではなく、「データエンジニア」がデータを整理・加工し、企業の成長に必要なデータを分析します。

AIやデータサイエンス関連市場は、今後も拡大が予想されます。DX人材不足の問題もあり、リスキリングによるデータ活用人材の確保は重要でしょう。

クラウド活用

クラウドとは、インターネットを通じて、ネットワーク越しにITリソースやアプリケーションソフトなどを利用できるサービス形態全般を指します。クラウドサービスの活用が増えれば、IT技術者のニーズも当然高まります。設計や構築、運用などあらゆる分野でリスキリングは必要です。担当する業務によって、習得すべきスキルは異なるでしょう。

セキュリティ

リスキリングの学習分野として「情報セキュリティ」も人気があります。IT技術のセキュリティ全般の知識や、それらに関連するスキルの習得は必要不可欠です。多くの企業は、デジタル資産の保護に関して大きな課題に直面しています。

サイバーセキュリティのスキルギャップを解消するためにも、リスキリングによるセキュリティ専門の人材育成は必要です。

業務プロセス設計

リスキリング施策で重視されるスキルに「業務プロセス設計」が挙げられます。業務プロセス設計とは、業務全体を最適化するために業務フローを作成・修正する作業を指します。フローの最適化は、業務を円滑にすすめるために必要なスキルといえるでしょう。

まとめ

時代の急速な変化にともない、技術革新などに対応するための知識やスキルの習得は必要です。新しい知識やスキルを身につける「リスキリング」の言葉がビジネスシーンで使われるなか、リスキリングに似た意味の言葉と混同してしまうケースがあるかもしれません。

この記事では、リスキリングとよく似た意味合いで使用される言葉の意味の違いを解説するとともに、リスキリングの必要性などもお伝えしました。

リスキリングとは、業務において新たな専門知識・スキル・技能が必要になった時に備えて勉強する取り組みを指します。DX化の推進にともない、IT技術やAIの発達で働き方が大きく変化しました。今まで業務が不要となり新たな仕事に取り組む必要性も出てくるでしょう。

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