人事面談の手順
人事面談では、上司や人事担当者が部下や社員を評価するだけでなく、部下が前向きな気持ちで仕事に取り組めるように、相手の成長を願って向き合うことも大切です。
そのためには、短い時間の中で部下のことをしっかり見て、理解しあうよう努めなければいけません。
「仕事が忙しくて、人事面談に割く時間がない」「人事面談は面倒だ」と思うのではなく、上司としての重要なマネジメント業務の1つであると認識しましょう。
それを念頭に、人事面談の進め方を見ていきましょう。
①アイスブレイクをする
1対1の面談は、誰もが緊張するものですし、自分と上司の評価が異なることへの不安や、悪い結果かもしれないと思う不安など、ネガティブな気持ちで面談に臨む部下も多いでしょう。
人事面談では、部下から本音を聞くことが望ましいですが、口下手な人や緊張しやすい人は、うまく返答できなかったり、黙り込んでしまうこともあります。
また、上司から一方的に話す面談にならないようにするためにも、面談の空気づくりは重要です。対話ができる雰囲気を作るためのアイスブレイクを入れて、お互いがリラックスして話ができる環境づくりを心掛けましょう。
まずは、部下が話しやすい環境になるように、他の社員に会話を聞かれないように個室を用意しましょう。そして、緊張を和らげるために雑談をしたり、仕事とは無関係な話から始めたりするなど、なるべく堅苦しい雰囲気を作らない努力が必要です。
②本人の口から状況を語ってもらう
先ずは、部下に自分自身の状況を振り返ってもらいましょう。
部下自身から自己評価を説明してもらうことで、自己肯定感の高さや、どこに自信を持っているか、今後どんな仕事なら自信を持って取り組めるかを確かめることができます。
部下が自信を持っている点を確認できれば、より自己肯定感を高めるマネジメントに繋がりますし、実際の評価との乖離が大きければ、それを矯正していく指導やアドバイスが必要になります。
尚、自己評価を確認する際は、「これから一緒に振り返りをしたいと思いますが、まずは○○さんの考えを聞きたいと思います。これまでの取り組みについてどのようにお考えですか。ざっくばらんに聞かせてください」と話を促しても良いですし、話が出てこない部下であれば「あの仕事はずいぶんと苦労して取り組みましたよね。いかがでしたか?」と仕事を特定しながら状況を聞くと良いでしょう。
③評価を伝える
アイスブレイク後は、上司や人事担当者から評価を率直に伝えます。
先ずは、目標の達成度合いを報告し、評価できるポイントや達成できた部分を褒めましょう。その際、『無理に褒める』のではなく、『認める』というスタンスが重要です。
大きな成果ではなくても、日頃から取り組んでいることを伝えるとよいでしょう。
また、率直に評価ポイントを伝えることにより、上司が自分の仕事ぶりを認めてくれているという認識が生まれ、承認してくれた上司への好意や信頼感が高まり、上司のアドバイスや支援を受け入れやすくなります。
また、評価を伝える際は、評価に対して疑問や不信感が残らないように理由も説明しましょう。
④問題や課題を率直に伝える
もちろん、褒めることだけで終わらせるのではなく、問題点や本人の弱い点などがある場合は、具体的な事実に基づいて率直に伝えることも重要です。
問題や課題を伝える際は、「本当は言いたくないけれど……」や「立場上、言わせてもらうけど……」など自己保身の言葉を入れないよう注意しましょう。自己保身の言葉を言われた部下は、「私のための指導じゃなくて、自分の立場を守りたいだけなんだな」とマイナスな気持ちになり、上司の指摘に対して心を閉ざしてしまいます。
また、相手を傷つけたくないのであれば、「ここから先は、少し耳の痛い話かもしれませんが、少しだけ聞いてもらえますか?」と相手への配慮の言葉を述べたほうが良いでしょう。
⑤今後の目標について考える
部下による自己評価と上司からの評価の確認を終えたら、来期の目標の話に進みましょう。目標設定をする際は、前向きな気持ちで目標を立て、それに向けた具体的な取り組みや課題を決めます。
また、部下の考えがまとまらない場合は一緒に考えてあげましょう。その場合も、設定目標の妥当性や、数値目標の明確化の方法など、具体的なポイントを示しながらも、サポートする立場に徹し、自発的な返答や解決策を待つことが重要です。
⑥今後のキャリアや希望について確認する
最後に、今後のキャリアに関する希望などを聞きましょう。将来的にどんなキャリアを築きたいのかを確認していると、マネジメントの中で社員の能力を効率的に引き出したり正しく導いたりすることができます。
また、お互いが不安な点を残したままにしてしまうと、せっかくの面談が無駄になってしまいます。気になる点があれば、遠慮なく言ってもらえるよう促しましょう。
⑦人事面談が終わったあと
面談後は、次の面談までの間にどのような行動をとっているのか、日頃から部下に関心を持って行動観察し、記録をつけておくことが必要です。
行動観察というと、監視をしているように思うかもしれませんが、上司は自身の指導根拠、評価根拠を伝える責任があるので、ポイントだけでも記録をしておくことが必要です。
また、面談をきっかけに部下との対話や日頃のコミュニケーションを充実させることも重要です。
部下に対して気になる点があった場合に、次の面談で指摘すればいいやと放置し、面談のときに過去のことを持ち出して指摘する上司もいますが、部下にとってみれば「そのくらいのことならば、その時に指摘してくれればいいのに」となることもあるでしょう。日頃のコミュニケーションで伝えやすい環境があるからこそ、面談でのアドバイスが有益になるので、心掛けていきましょう。
人事面談を行う際の注意点
ここからは、人事面談を実施する際の注意点をご紹介します。
①上司が話し手になってしまうのはNG
部下が上司に信頼感を覚える時は、「聞いてもらえた」と感じる時です。上司が話し手になってしまい、部下の話を深められないでいると、信頼関係は生まれません。聞く8割、話す2割くらいの意識で面談に臨むとよいでしょう。
②人間性や人格について触れない
人事面談は、部下の能力を向上させ、モチベーションを維持するために行う面談です。「納期を守れなかったあなたが悪い」と相手を非難するのではなく、「納期を守れないことがあった」と具体的事実をもとにフィードバックすることが重要です。
③相手に迎合しすぎない
思ってもいないのに褒めたり、自分は思ってないが周りの人がそう言ってるなど、迎合したり逃避したりすると、上司の信用と信頼を損ねます。
部下の意見を突っぱねる必要はありませんが、自分の意見は自分の意見として「私の目には、こう映ってますよ」と素直に伝えることが重要です。
④客観的な話をする
上司は部下に対して自分自身が考える目標や思いを押し付けてしまいがちですが、評価や指導はあくまでも客観的な視点で行い、可能な限り自分の問題点を部下自身が自発的に気づけるよう導くなどサポートに徹することが重要です。
上司は目標に対する達成度で評価し、部下が自身の足りない部分に気づいていなかったり、会社の評価が自己評価と食い違っている場合には、冷静に具体的なアドバイスをしましょう。その際は、決して感情的になって人間性を否定したり、自分の価値観を押し付けてはいけません。
⑤他の人との比較をしない
評価をする際は、部下がどれだけ成果を上げたかの絶対評価で判断し、他の社員と比べて評価しないよう心掛けましょう。
そのために、普段から個々の社員を観察したり、コミュニケーションをとりながら、努力や成長の過程を見守ることが必要です。それを人事面談で褒めることで、社員の仕事に対する熱意の維持や、上司に対する信頼感につながります。
真の対話を目指し共感力を磨く
人事面談で大切なことは、相手と“真の対話”をすることです。
職場では論理的思考を求められますが、人間には感情があることも忘れず、相手と向き合う姿勢を持つことが重要です。そうして向き合えた組織こそ、個人の成長と組織の成長を実現していくのです。
部下と向き合うためには、自分の視点で物事を論じて相手を言い負かそうとするのではなく、部下の視点に立って部下の気持ちを理解しようと対話をすることが大切です。そうすることにより、物事が客観的に見えるようになり、相互理解を深め信頼感を築いていくこともできます。
両者にとってよりよい面談になるようにしよう
特に大きな部署は、さまざまな性格の部下がおり、人事面談を行う上司や人事担当者は苦労を覚悟する必要があります。中には、部下が返答に困窮してしまったり、予想外の部下の意見に戸惑う場面もあるでしょう。
部下を評価し伝え、納得を得ることは、困難を伴うこともありますが、人材育成のためにはとても重要なことです。
評価だけなら書面のみでも出来ますが、部下のモチベーションを高めたり、自己評価を矯正したり、隠れた能力を引き出せるかは人事面談での上司の腕の見せ所です。
そして、それが上司自身の評価アップや会社および部署の業績アップにつながるので、人事面談を行う際は、上司も前向きな気持ちで取り組みましょう。
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