リスキリングによる専門資格の取得は、企業全体での生産性の向上につながります。企業は、従業員がリスキリングの一環として専門資格を取得し、スキルアップに取り組みやすい環境を整える必要があります。しかし、DX推進による技術革新の変化に対応するためには、どのような資格を取得すればいいのかわからない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、時代のニーズに応えるために取得するべき人気の資格を紹介します。取得のメリットや注意点についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
リスキリングの重要性
リスキリングは、企業が時代の変化に対応していくうえで非常に重要な取り組みです。社会全体が、年功序列に基づく終身雇用から個人の資質が問われるジョブ型雇用へ大きく変わっています。時代の変化にともない雇用形態が変化するのは自然な流れでしょう。また、企業だけでなく、従業員側にも時代に合ったスキルアップへの取り組みが求められます。
企業が必要とするスキルや能力と、実際に従業員が保有しているスキルや能力にミスマッチがあっては、企業の成長や生産性に影響を及ぼしてしまいます。企業が従業員に求めるニーズと、従業員の知識や能力などのスキルギャップを解消するためにも、リスキリングは必要でしょう。
社内にどのような人材が必要で、どのようなスキルが不足しているのかを明確にすれば、リスキリングの方向性が決まり企業の経営戦略に役立ちます。リスキリングは、新たな人材を確保するためのコストの軽減にもつながるだけでなく、リスキリングによる人材育成で従業員の知識やスキルが向上すれば企業の成長につながるでしょう。
リスキリングの資格取得のメリット
従業員側から見たリスキリングによる資格取得のメリットには、以下の点が挙げられます。
- 自分の価値を高められる
- 生産性を向上させることができる
- 希望する職種への配置転換や昇進の可能性が拡大する
それぞれのメリットを詳しく検証します。
①自分の価値を高められる
効果的なリスキリングは、人材価値の向上につながります。リスキリングを通して専門的な資格が取得できれば、企業とのスキルギャップを解消し業務の幅が広がるでしょう。また、定期的なリスキリングによって、スキルセットが拡充すれば将来的なキャリアパスの充実につながります。
リスキリングによるスキルギャップの解消は、将来の転職に有利なだけでなく、現在の職場でのポジション向上や待遇改善の効果が期待できます。
②生産性を向上させることができる
リスキリングでより専門的な知識やスキルが身に付けば、業務における生産性の向上も期待できるでしょう。
たとえば、リスキリングを通して最新のITツールに関する知識・技術を習得すれば、業務遂行に必要な時間や労力が大幅に削減されます。ビジネスにおける生産性向上は待遇面でのベースアップに結びつくでしょう。
③希望する職種への配置転換や昇進の可能性が拡大する
リスキリングによるスキルセットの拡充は、将来の配置転換・昇進の備えとしても非常に有効です。株式会社ビズリーチが2023年3月に公表した中途採用に関するアンケート調査の結果によると「直近1年で、即戦力人材の採用難度は高まった」と実感していると回答したのは88.2%でした。
転職を考えている場合は、専門性の高い知識やスキルを保有していれば即戦力としての採用に有利です。また、現職においても資格を取得した場合などは、自身のステージもあがり昇進の可能性もあるでしょう。
参照:中途採用担当者88.2%が「直近1年で採用難度が高まった」と回答
リスキリングの資格取得の注意点
リスキリングの資格取得で基本的な注意点をおさえておけば、取得後の人材価値を効率よく向上させられます。どのような資格を取得すれば業務の効率化の改善につながるのか、自分に合った資格はどのようなものがあるのかなど、資格を取得する前に検討しましょう。ここでは、リスキリングの資格取得の注意点をお伝えします。
自分に合う資格を取る
リスキリングでは、もともとの資質に合った資格の取得が大切です。例えば、事務系の仕事が得意な方が営業職の専門資格を取得しても効果は発揮できないでしょう。資格取得で習得した知識や能力を発揮するためには、自分の適性に合うものを選ばなければなりません。
プログラミングに興味があるなら「基本情報技術者」や「セキュリティスペシャリスト」などの資格を保有することで人材価値は高まります。自己分析を繰り返し、資質に合った資格のリストアップから始めてみましょう。
効果に期待しすぎない
リスキリングの一環として資格を取得する場合、短期的な効果を期待すると失敗するリスクが高まります。特に、業績や営業での成約率アップなど、目に見える数値だけをゴールにすると、思うような効果が上がらなかった場合にモチベーションは低下してしまいます。
リスキリングでは中長期的な視点が重要です。短期的な数字ではなく「資格の取得によってどのような仕事ができるようになるか」を考えると、モチベーションの向上に直結します。
リスキリングの資格取得で得られるスキル
資格の種類にかかわらず、リスキリングではさまざまなスキルを獲得できます。ここからはスキルの意味と効果を検証しつつ、リスキリングの意義を深く見ていきましょう。
ITスキル
ITスキルは、どの業種においても必須のスキルといえます。ExcelやWordなど、基礎的なPCスキルはもちろん、PowerPointやマクロ作成など複雑なスキルもリスキリングを通して習得可能です。リスキリングによるITスキルの向上は、人材価値を高めるとともにキャリアパスの充実につながります。
データ分析スキル
「データの意味や本質を読み解く力」は、どの業種でも求められます。複合的なデータを総合して解析し、問題解決までのプロセスを導き出すデータサイエンティストは幅広い企業で重宝され、管理職としてキャリアアップする際にも有利です。
膨大なデータから特定の課題を抽出し解決につなげるスキルは、ビジネスパーソンとして必要なスキルといえるでしょう。
マーケティングスキル
マーケティングスキルはITスキルと並び、幅広い領域で必要とされるスキルです。市場の動向を数値的に分析し、時代に沿った施策を論理的にプランニングするスキルは、IT業界だけに求められるものではありません。
マーケティングスキルとデータ分析のスキルの組み合わせは、無機質なデータから「本質を抽出する力」が身につき、対応できる業務の幅は大きく広がるでしょう。
コミュニケーションスキル
ビジネスシーンにおいては、どのような分野でもコミュニケーション能力が求められます。個人単位でのデスクワークが多いイメージのあるプログラマーやエンジニアであっても、同僚や上司、クライアントとのコミュニケーションは欠かせません。
営業職やコンサルティング職であれば、社内でのコミュニケーションだけではなく、クライアントとの緊密なコミュニケーションが必要です。
リスキリングで人気のIT系資格
DX推進による技術革新の変化に対応するためには、IT系の資格は人気です。しかし、その中でもどのようなニーズに対応できる資格なのかわからない方も多いのではないでしょうか。ここでは実務ですぐに役に立つ、リスキリングで人気のIT系資格を紹介します。
ITパスポート
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が運営する資格試験で、ITに関する基礎的な知識・スキルを習得する国家資格です。「ITパスポート」の取得で、情報処理やデータベース、セキュリティなど、ITに携わる基礎知識の保持を証明できます。合格率50%と難易度は低く、必要な勉強時間はIT未経験者で約180時間と言われています。
「パスポート」と名前についているようにIT業界の入門編の意味があり、IT業界に直接関係のない業種でもベーシックな資格として取得が推奨されています。
情報セキュリティマネジメント検定
同じく独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が運営する検定試験で、平成28年度(2016年度)より情報処理技術者試験の区分としてスタートしました。試験に合格すれば、国家資格である「情報セキュリティマネジメント」が取得できます。
IT系の関連資格のなかでは初心者〜中級者向けとして位置づけられており、直近数年間の合格率は50〜70%です。基礎的なITスキルだけでなく、情報セキュリティについての理解を深めたい方におすすめの専門資格です。
G検定
JDLA(日本ディープラーニング協会)が運営する資格試験で、ジェネラリスト検定とも呼ばれています。人工知能に関連した専門資格で、取得すれば機械学習や人工知能開発の基礎知識を証明できます。自宅のネット環境から受験でき、合格率は60〜70%前後です。
機械学習・人工知能開発は、今後も需要の増加が見込まれる分野です。取得しておけば業務効率化やキャリアップの際に有利でしょう。
データサイエンティスト検定
一般社団法人データサイエンティスト協会が運営している資格試験です。データ分析の初学者を対象とした試験であり、将来的にデータサイエンティストを志している学生も受験できます。2022年の合格率は50%で合格のハードルもそれほど高くありません。
データサイエンティスト検定を取得すれば、統計解析やデータ分析の基礎知識が身に付き、データサイエンティストとしての活躍の可能性が広がります。
MOS
MOSは「Microsoft Office Specialist」の略で、MicrosoftOffice製品に関する深い知識・理解が問われます。Word、Excelの基本的な操作はもちろん、マクロ構築やPowerPointによる図表作成など、実務的な知識が網羅的に問われる試験です。資格の取得は業務に必須のスキルを証明できます。
MicrosoftOfficeはどの業種でも必要なツールの1つです。取得しておけば将来のキャリアパス充実につながるでしょう。
統計検定
統計学の基礎的・応用的な知識が習得できる資格です。統計検定には以下の区分があり、それぞれに求められるスキルが異なります。
- 統計検定(4~1級)
- 統計調査士
- データサイエンス
統計検定の取得は、データサイエンティストへのキャリアパスが導かれます。統計検定1級以外はCBTに対応しており、ネット環境さえあれば自宅からの受験も可能です。合格率は入門レベルの3級で60~75%となっており、統計知識があれば合格できます。
統計の基礎知識を固めたい方、将来的にデータサイエンティストとして就職・転職を考えている方におすすめの資格です。
マーケティング・ビジネス実務検定
国際実務マーケティング協会(International Marketing Skill Standardizing Association)が運営する専門資格です。2005年1月に新設され、業種を横断したマーケティングの専門知識が問われる資格として定着しています。業種にとらわれないマーケティングの知識を実証できる資格です。
マーケティング検定
公益社団法人日本マーケティング協会が主催する検定試験です。3級から1級で構成されており、マーケティングに関する網羅的な知識・理解が問われます。CBTに対応しているため、全国のテストセンターからの遠隔受検が可能です。マーケティング・ビジネス実務検定とあわせて取得すれば、実務レベルでのマーケティングスキルを証明できるでしょう。
ビジネスマネージャー検定
東京商工会議所が管轄する専門資格です。管理職やマネージャーになる方は知っておくべき知識・スキルが重点的に問われます。試験は年2回実施されており、CBT方式とIBT方式から選択できます。
まとめ
DX推進による業務の効率化を上げるために、企業は、リスキリングを通して従業員の知識・スキルをアップデートすることが重要です。また、適切なタイミングでのリスキリングの実施は、不足しているスキルが可視化され人材価値の向上につながるでしょう。
この記事では、DX推進による技術革新の変化に対応するためのIT系の資格を紹介しました。取得のメリットや注意点についても解説しています。
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