転職活動の準備は万全ですか?
転職を決意したら、まずは転職活動のスケジュールを立てましょう。無計画に進めると、希望する企業に出会えなかったり、転職活動が長引いたりすることも。まずは次の事例を参考に、自分自身の行動と照らし合わせて、考えてみてください。
事例
新卒で入った現在の職場を離れ、新たなキャリアに挑戦しようと決意した28歳の翔太さん。仕事を続けながら転職活動を進める予定ですが、どのように進めていくべきか迷っています。そんな翔太さんが、社会人1年目の妹の美咲さんを相手に自身の転職活動について話をしています。
翔太さん: 美咲もそろそろ仕事の大変さがわかってきた頃じゃないか?向き不向きを考えるより、まずは働けるだけでもありがたいって思わないと。
美咲さん: 心配しなくても大丈夫。少しずつ慣れてきたし、何とかやってるよ。それよりお兄ちゃんはどうなの?次の仕事、もう決まったの?
翔太さん: 安定を優先して、やりたいことは次のステップで考えるつもり。あんまりこだわりすぎても仕方ないし、新卒と違ってキャリアもある。面接のポイントもわかってるから、そこまで心配することはないよ。あとは直感を信じて、自分に合いそうな会社を選べばいい。
美咲さん: ずいぶん余裕そうだけど、本当にそれで大丈夫?もう少しちゃんと準備しなくて平気なの?
翔太さん: とりあえず履歴書と職務経歴書を用意すればいいかな~と思ってるけど……。
美咲さん: それだけで十分なの?転職活動にはしっかりとした計画が必要じゃない?
翔太さんの考え方には、少し楽観的な部分があるようです。転職活動に必要な準備や計画について、どこが足りていないのか考えてみましょう。
※皆さんもメモ帳などに書き出してみてください(所要時間:5分程度)。解説は本記事の最後に記載しています。
皆さん自身にとって、そもそもは「働く」とはどういうことですか?
転職活動を始める前に、改めて「働く」ということの意味について考えてみましょう。
① 目的を持つことの大切さ
一般的に、人は明確な目的を持つことで初めて行動に移せます。例えば、「デザイナーになりたいからデザインスクールに通う」「プログラマーになりたいから専門学校で学ぶ」といったように、目指す職業に就職するため、またはスキルを得るために、行動を起こし努力をすることができます。
「何を目指したいのか」「どんなキャリアを築きたいのか」という明確な意志がなければ、計画的に学習や行動をすることが難しくなり、ただ言われたことをこなすだけの受け身の姿勢になってしまいます。
どんな目標であっても、はっきりした目的があれば、それを実現するために何をすべきか、どのスキルを身につけるべきかが見えてきます。転職後の環境でも、自分の軸をしっかり持っていることは大きな強みとなるでしょう。
② 働く目的は人生を左右する
働く目的は人それぞれ違いますし、正解はありません。「経済的に安定したい」「家族を支えたい」という理由も立派な動機です。実際、多くの人が生活のために働いています。
しかし、収入だけを目的にしてしまうと、どんなに厳しい仕事でも耐えられるかというと、必ずしもそうとは限りません。せっかく仕事に時間を費やすのであれば、自分なりの目的や意義を見出し、やりがいや達成感を味わえる方が、長期的に見ても充実したキャリアを築くことができます。
また、「自分の仕事が誰かの役に立っている」という実感は、働く上でのモチベーションにもなります。転職を考える際には、「仕事を通じて何を得たいのか」「どんな成長をしたいのか」をしっかりと見つめ直すことが、結果的により良い選択につながるでしょう。
また、仕事をすることで得られるものには、次のようなものがあります。
仕事を通じて得られるもの
- 自分の強みや個性を活かす機会
- 専門的な知識の習得やスキルの向上
- 仕事を通じた人脈の広がり
- 次のキャリアアップに向けた経験の蓄積
- 企業活動を通じた社会や環境への貢献
- 趣味やプライベートの充実と幸福感
③ 多様な働き方を知る
ただし、「働く」といっても、その目的だけでなく、働き方もさまざまです。自分のライフスタイルやキャリアプランに合った働き方を選ぶことで、より充実した人生を送ることができます。
最近では、より柔軟な働き方が認められ、多様な選択肢が増えています。例えば、家族の介護をしながら仕事をしたり、副業として個人事業をしながら働いたり、大学や専門学校で学びながら仕事をする人も珍しくありません。また、地方に移住しリモートワークをしながら、別の仕事と両立するケースも増えています。
こうしたさまざまな働き方でも、雇用形態を大別すると「正規雇用」と「非正規雇用」の2つに分けられます。それぞれの雇用形態における働き方の特徴は次のとおりです。
分類 | 雇用形態 | 特徴 |
---|---|---|
正規雇用 | 正社員 | 企業と直接雇用契約を結び、安定した雇用が確保される。福利厚生が充実している点がメリット。最近では短時間正社員制度を導入する企業も増えている。 |
非正規雇用 | 派遣社員 | 人材派遣会社と契約し、派遣先の企業で業務を行う。専門スキルを活かせる一方で、契約期間が限定されるため雇用の安定性は低い。福利厚生は派遣会社によって異なる。 |
契約社員 | 企業と直接雇用契約を結ぶが、期間限定の契約となる。ボーナスや退職金が支給されないことが多い。福利厚生は企業によって異なる。 | |
パート・アルバイト | 労働時間が短く、正社員に比べて賃金が低い。柔軟な働き方が可能だが、福利厚生が適用されない場合が多い。 |
どの働き方を選ぶかは、自分の価値観やライフスタイルによって異なります。転職を考える際には、雇用形態だけでなく、自分に合った働き方についてもじっくり検討することが大切です。
転職活動とは?
では、なぜ転職活動が必要なのでしょうか。転職活動の必要性とその意義について考えてみましょう。
① 転職活動は自己理解を深める機会になる
転職活動とは、言葉通り新しい職場を見つけるために行う一連のプロセスのことを指します。ただし、転職は「したい」と思うだけでは成立しません。企業側が求める人材と、自分のスキルや経験が一致して初めて採用が決まります。どれだけ強く「この会社で働きたい!」と思っても、企業があなたを採用する価値を感じなければ採用には至りません。
企業は、単に人手を増やしたいのではなく、自社の将来の成長を担う人材を求めています。したがって、転職活動では「この企業で働きたい」と思える会社を探すと同時に、「その会社に対して自分はどのように貢献できるのか」を明確にする必要があります。
これは一朝一夕に考えられることではなく、「なぜ自分は働くのか」「自分にはどんな強みや適性があるのか」といった深い自己分析が求められます。このプロセスを通じて、どのような仕事が自分に適しているのか、どの企業なら自分のスキルや経験を活かせるのかを見極めていくことになります。
つまり、転職活動は、自分のキャリアを見つめ直し、自分に最適な環境を見つける貴重な機会でもあります。これまで培った経験やスキルを活かせる場所を見つけるためには、じっくりと考え、慎重に行動することが大切です。
A先輩の失敗談:失敗から学ぶ転職の教訓
自分を見つめ直さない転職は成功しない
「とにかく今の仕事を辞めて転職できればいい」という安易な考えが、後悔を招くこともあります。私自身、焦って転職活動を進め、大手企業に転職できたものの、すぐに「この仕事は自分に合わない」と気付きました。
仕事内容に興味を持てず、ノルマを達成するのが難しく、周囲の期待に応えられないことに強いストレスを感じ、結局短期間で退職することに。次の転職先を見つけるのに時間がかかり、「もっと慎重に考えて転職活動をすればよかった」と何度も後悔しました。
転職は単なる職場の変更ではなく、人生の重要な決断です。成功するためには、自分の価値観や働き方のスタイルをしっかりと見つめ直し、「なぜ転職したいのか」「次の職場で何を実現したいのか」を明確にすることが必要不可欠です。
転職活動の流れを理解しよう
転職活動をスムーズに進めるためには、どのようなステップを踏めばいいのかを把握しておくことが大切です。まずは、転職活動に必要な取り組みについて、確認してみましょう。
① 転職活動に必要な取り組み
転職活動を始める際、多くの人が「何から手をつければよいのかわからない」と不安を感じます。確かに、やるべきことはたくさんありますが、新卒の就職活動と似た流れで進めることができます。
転職活動を成功させるためには、以下のような取り組みが必要になります。本来の目的を忘れずに計画的に転職活動を進め、最後まで冷静さを持って取り組みましょう。
取り組み | 説明 |
---|---|
自己分析・自分の強みの言語化 | 自分の強みやスキルを整理し、転職の目的を明確にする重要なプロセスです。様々なフレームワークや自己分析ツールなどを活用して、自分の強みを言語化しましょう。 |
情報収集・企業分析 | 世の中になる様々な業界の動向や希望する企業の情報を調べ、求人を探し、業界研究を行うプロセスです。仕事内容を具体的にイメージし、どの業務で自分が貢献できるかアピールポイントを整理しましょう。 |
スキルアップ・資格取得 | 転職先で必要になりそうな知識や資格を身につけ、即戦力としての準備をするプロセスです。必要に応じて職業訓練校やセミナーを受講し、成果物を残せるように準備しましょう。 |
送付状・応募書類の作成 | 履歴書や職務経歴書を作成し、企業へアピールするための応募書類を作成するプロセスです。送付状の準備も忘れずに行いましょう。 |
面接・筆記試験の準備 | 効果的な自己PRを考え、面接・試験対策を行うプロセスです。実際にいくつか応募してみて、面接に慣れることも重要です。 |
② 転職活動の流れ
中途採用の転職活動は、企業ごとに採用のタイミングが異なるため、新卒採用とは異なり、計画的に動く必要があります。
特に即戦力を求める企業が多いため、自分の強みや実績をしっかり整理しておくことが大切です。一般的な転職活動の流れは、次のようになります。
- 転職の準備
- 転職の目的を整理する
- 自己分析を行い、経験やスキルを明確にする
- 生活費や転職後の資金計画を立てる
- 在職中なら、業務の引き継ぎや転職活動の進め方を検討する
- 転職後に必要なスキルを身につける
- 情報収集
- 業界の動向や市場の変化を調べる
- 興味のある企業についてリサーチする
- 求人情報を集める
- 転職経験者のアドバイスを参考にする
- 応募書類の提出
- 履歴書や職務経歴書を作成し、企業へ応募する
- 選考・面接
- 面接で自分の強みや経験を的確に伝える
- 企業の求める人材像を理解し、適切なアピールを行う
- 内定が決まった場合は、雇用条件をしっかり確認する
- 内定・オファーの確認
- 企業からのオファー内容を確認し、入社意思を決定する
- 入社日を決める
- 入社準備
- 労働契約などの必要な手続きを行う
- 在職中であれば、円満退職に向けた手続きを進める
転職活動は、ただ新しい職場を探すだけではなく、自分のキャリアを見つめ直し、より良い働き方を考える機会でもあります。計画的に取り組むことで、納得のいく転職を実現できるでしょう。
転職活動のスケジュールを立ててみよう
① 転職活動のスケジュールの例
転職活動を計画的に進めるために、大まかなスケジュールの例は下記の通りです。
年月 | 実施項目 | 具体的な活動内容と目標 | 活用ツール・参考情報 |
---|---|---|---|
2025年3月 | 自己分析 | キャリアの棚卸しを行い、強み・弱みを整理する。キャリアビジョンを明確にし、転職理由をはっきりさせる。 | キャリアシート作成ツール(リクナビNEXT)、自己分析診断(グッドポイント診断、ストレングスファインダー) |
2025年4月 | 情報収集 | 興味のある業界・企業をリサーチし、転職市場の動向を把握する。企業研究を進め、求められるスキルを洗い出す。 | 転職サイト(doda、Indeed)、企業ホームページ、業界レポート(JACリクルートメント、日経業界地図) |
2025年5月 | スキルアップ | 求められるスキルを学び、必要な資格取得を検討。語学・プログラミング・マネジメントスキルなどを向上させる。 | オンライン学習(Udemy、Coursera)、資格試験対策(スタディサプリ、TAC) |
2025年6月 | 応募準備 | 履歴書・職務経歴書を作成し、自己PRや志望動機を明確にする。転職エージェントと相談し、応募企業を決定する。 | 書類作成ツール(履歴書メーカー、Canva)、キャリアカウンセリング(リクルートエージェント、マイナビエージェント) |
2025年7月 | 面接対策 | エントリー開始、企業ごとにカスタマイズした履歴書・職務経歴書を準備。模擬面接を受け、自己PRの練習をする。 | 求人サイト、転職エージェント、面接対策サービスの利用 |
2025年8月 | 内定・交渉・退職準備 | 企業との面接を受け、条件交渉・内定獲得後、入社時期などの調整を進める。オファー条件の比較を行い、最適な選択をする。また同時に退職準備を進める。 | 企業採用ページ、年収交渉シミュレーター(年収チェッカー)、転職エージェント相談 |
2025年9月 | 退職手続き・引き継ぎ | 退職届を提出し、円満退職のための引き継ぎを実施。現職場との調整を円滑に行い、トラブルなく退職する。また新しい職場での準備を進め、転職成功に備える。 | 退職届テンプレート、退職手続きガイド(厚生労働省)、円満退職のコツ(転職情報サイト) |
2025年10月 | 入社準備・新生活開始 | 新しい職場での業務を円滑に進めるため、社内ルールや仕事内容を事前に把握する。新しい人間関係を築くための準備をする。 | ビジネスマナー研修(LinkedIn Learning)、業界研究資料、入社後の目標設定ツール |
② 自分の転職活動スケジュール【無料ワーク資料】
転職活動を計画的に進めるために、大まかなスケジュールを立ててみましょう。
いま一度、転職活動に必要な準備を考えてみましょう
学習した内容を踏まえて、冒頭の翔太さんと美咲さんの会話を振り返ってみましょう。
翔太さん: 美咲もそろそろ仕事の大変さがわかってきた頃じゃないか?①向き不向きを考えるより、まずは働けるだけでもありがたいって思わないと。
美咲さん: 心配しなくても大丈夫。少しずつ慣れてきたし、何とかやってるよ。それよりお兄ちゃんはどうなの?次の仕事、もう決まったの?
翔太さん: 安定を優先して、②やりたいことは次のステップで考えるつもり。あんまりこだわりすぎても仕方ないし、新卒と違ってキャリアもある。面接のポイントもわかってるから、そこまで心配することはないよ。あとは直感を信じて、自分に合いそうな会社を選べばいい。
美咲さん: ずいぶん余裕そうだけど、本当にそれで大丈夫?もう少しちゃんと準備しなくて平気なの?
翔太さん: ③とりあえず履歴書と職務経歴書を用意すればいいかな~と思ってるけど……。
美咲さん: それだけで十分なの?転職活動にはしっかりとした計画が必要じゃない?
最近転職を決意した翔太さん。しかし彼の考え方には問題があります。それは、計画性がなく、転職活動を「運に任せた挑戦」と捉えている点です。
翔太さんが見直すべきポイントは次のとおりです。
① 自己分析をしない転職はリスクが高い
転職活動の第一歩は、自己分析です。働けることに感謝することは大切ですが、自分の強みや適性を理解しないまま転職してしまうと、希望する職場に入社できたとしても、仕事内容が自分に合わず、後悔する可能性があります。在職中も自己分析を定期的に行い、自分自身のキャリアアップに役立てるようにしましょう。
② 自分が本当にやりたいことを考えていない
自分は何がしたいのか、何ができるのかを言語化することは転職活動において非常に重要です。「やりたいことは次のステップ」や「転職すれば何とかなる」という考えではなく、「自分は何をしたいのか」「どんなスキルが活かせるのか」を、自己分析の時点で明確にすることが重要です。
また経験があるからといって必ずしも評価されるわけではありません。企業が求める人材像やニーズにマッチするかが採用のポイントになりますので、自分が転職先が求めている人物像に合わせたアピールができるか、どのように貢献できるかを言語化しておくことが大切です。
③ 転職活動の準備を理解していない点
転職の準備は、履歴書や職務経歴書を用意するだけではありません。新卒の就職活動と同様に、自己分析、情報収集、スキルアップ、応募書類の作成、面接・筆記試験の対策など、しっかりとした準備が必要です。計画的に進めることで、転職活動の成功率を高めることができます。
計画的な転職活動で後悔しない選択を
翔太さんは、ようやく目標に向かって動き出しました。転職活動を成功させるためには、綿密な計画を立て、一歩ずつ確実に進めることが重要です。まずは、大まかなスケジュールを作成し、それを基に行動していきましょう。自己分析や企業研究を進める中で、最初に立てた計画を見直し、柔軟に調整していくことも大切です。
まとめ
このステップでは、以下のポイントについて学びました。理解できたかチェックしてみましょう。
☑ 明確な目的を持って働くことの重要性を理解した
☑ 転職活動に必要な準備について説明できる
☑ 転職活動の全体スケジュールを把握できた
☑ 自分の転職活動のスケジュールを立てた
転職活動は、自分の未来を左右する大きな決断です。しっかりと計画を立て、納得のいく転職を目指しましょう。
この記事は役に立ちましたか?
もし参考になりましたら、下記のボタンで教えてください。