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【人事担当者向け】面接官マニュアル(Vol.1)

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目次

面接官とは

面接官は採用担当者や経営者が担うのが一般的ですが、企業によっては募集先部門の社員が担うこともあります。

現場の雰囲気が分かっている人が面接をしたほうが、より深いコミュニケーションを取ることができ、さらに活躍人材を採用できる可能性が上がるからです。

面接官の目的は下記の2点です。

①候補者が自社に合う人物かどうかを見極める

面接官の役割の一つは、「候補者の人物像を見極めること」です。候補者が自社に合う人物かどうか、採用基準を上回っているかどうか、次の選考へ進めるかどうか等を、面接の場で判断します。

そのため、応募者にあらゆる角度から質問をして、適切に判断しうる情報を引き出していくことが求められます。

②入社したいという候補者の動機を形成する

もう一つの役割は、「入社動機を形成すること」です。会社側が求職者を見極めていると思われていることが多いですが、実は応募者側も就職して大丈夫な会社かどうかを見極めています。

候補者が企業に求めるものを把握し、それに合わせて自社の魅力を伝えたり、候補者の不安要素を取り除いたりして、候補者が「入社したい」「この会社ならば、活躍できそうだ」と感じられるよう働きかけます。

上記の2点がうまく機能するかどうかで採用成功、すなわち入社後の活躍が決まると言っても過言ではありません。

面接官の役割

面接官は「候補者の人物像を見極めること」と「入社動機を形成すること」の2つの目的を果たすために、下記の4つの役割を担っています。

①候補者に寄り添うフォロワー

フォロワーは候補者に寄り添い本音を引き出す役割を担っています。候補者の味方になり、話をしっかり聞くことで疑問点などを解消するとともに、良好な関係性を作り、次の採用段階に進みたいと思ってもらうことを目指します。また、入社動機を形成する役割も担っています。

②動機を形成するモチベーター

モチベーターは、主に入社動機を形成する役割を担っています。自社の魅力を伝え、候補者のモチベーションを高めていきます。

③気づきを与えるインパクター

インパクターは会話を通して候補者に気づきを与え、「ここで働いてみたい」と強く動機付けをする役割を担います。また、自社で働く覚悟を問い、最終面接へ繋げる見極め役でもあります。

④迷いを排除するクローザー

クローザーは見極めを行うとともに、候補者に入社意志の決断を迫り、採用活動を締めくくる役割です。候補者に不安要素や懸念要素があればそれらを払拭し、入社へ繋げていきます。

優れた面接官とは

より良い面接をしたい、優れた面接官になりたいと思っても、その定義が分からなければ目指すことはできません。ここからは、優れた面接官とはどのような人かについて解説します。

優れた面接官の特徴は下記の6点です。

①言語感覚に優れている

面接の場、採用チーム内での情報伝達の場など、採用活動のどのような場でも、語彙が豊富で、適切な言葉の選択ができる面接官は理想的だといえます。

言葉の選択が巧みであれば、面接の場で候補者に的確な質問を投げかけ、候補者の考えを導き出すことができます。また、面接の場で感じ取った候補者の強みや特徴といった抽象的な事柄を言語化できると、採用チーム全体で詳細な情報を共有することが可能になります。

②候補者に対して自己開示ができる

候補者が自社に合う人材かどうかを見極めるためには、候補者にできるだけ多くの情報を提供してもらわなければなりませんが、一方的に質問を投げかけられても、候補者はなかなか話しづらいものです。特に自身の弱みや現在抱えている不安などの情報については、気軽に打ち明けることができません。

候補者に自分のことを話してもらうためには、面接官が自分のことを話す「自己開示」が必要です。候補者が「自分だけが取り調べを受けて、丸裸にされている」 と感じることがないように、面接官が自ら進んで自分の情報を提供していきましょう。最初は学生時代の話題や毎日の業務についてなど、表層的な内容から入り、徐々に入社の動機、当時不安だったこと、自分の弱みとどう向き合ってきたかなど、自身の内面にかかわる話題へと掘り下げていましょう。

③候補者に関心があり、次々と問いが浮かぶ

候補者に関心を持ち、候補者の行動や考え方について「なぜ?」と深掘りしたくなったり、できるだけ詳しく話を聞きたくなったりする性質の人は優秀な面接官となる可能性が高いといえるでしょう。関心の高さや探究心の強さは、候補者を知るための原動力になります。

④認知バイアス(先入観や偏った考え)を認識し、低減させようと意識する

人間の認知は不完全であるため、思い込みや周囲の環境によって間違った判断をしてしまうことがあります。陥りやすい認知のゆがみをあらかじめ知り、それを低減させようと意識することで、より公正な判断をすることができます。

下記は、面接時に現れやすいバイアス(先入観や偏った考え)の例です。

A.ハロー効果

一つの顕著な特徴に引きずられて、他の特徴の評価が歪んでしまうこと。一つの良い特徴が目立つことで全体が良く見えたり、反対に悪い特徴が目立つことで全体が悪く見えたりします。

学歴・経歴・取得資格・性別・外見・立ち居振る舞い・言葉遣いなど、書類上と面接上で得られる様々な情報を客観的に評価できるようにしましょう。

B.確証バイアス

自分が持っている仮説や、自身の先入観に沿った情報だけを集めて、その仮説や先入観を裏付けようとすること。仮説や先入観を否定するような情報を無視する、軽く見たりするという行動も含まれます。

候補者が話している内容は、傾聴の姿勢で心から耳を傾けるよう心掛けましょう。

C.親近感の罠

出身地や出身大学、経験したスポーツなど、共通点がある人へ無意識に好感をもってしまい、評価が甘くなってしまうこと。

複数の候補者に対して複数の面接官で採用面接を実施し、誰を採用するか選定する際は、書類上の誤字脱字、服装などの身だしなみ、言葉遣い、適切な動作(礼の仕方・笑顔など)や不適切な動作(髪を触る・貧乏ゆすりをする癖など)の回数、共通の質問に対する回答が適切であるかどうかなど、客観的な評価を心掛けましょう。

D.中心化傾向

評価をする際、1〜5段階の3や、「どちらともいえない」といった中間を好む判定が多くなってしまうこと。候補者の合否を判断する覚悟の欠如や、評価基準の理解不足、判断材料となる情報を候補者から引き出せなかったこと等が原因で起こる傾向があります。

たとえば「第一印象」という評価項目に対して、「清潔感」「視線」「表情」の3つの指標があった際に、「清潔感:スーツを着崩していないか、髪や髭を整えているか、適度な清潔感があるか」「視線:面接官の目を見て挨拶と受け答えができているか」「表情:表情は暗くないか。笑顔であるか。緊張でパフォーマンスを損ねていないか。」というチェックポイントを「全てクリアしていたら評価5」「清潔感・視線・表情のうち2つをクリアしていたら評価4」「清潔感・視線・表情のうち1つをクリアしていたら評価3」など、それぞれの評価項目について、細かいルールを定めることで、ある程度防ぐことができます。

E.対比効果

絶対評価ではなく、他の候補者や自分自身と比較して評価してしまうこと。全員合格や全員不合格があり得るという認識をもち、「自分が心理的バイアスに陥っているかもしれない」という前提で面接をする、2名以上で面接を行うことなどで、ある程度防ぐことができます。

F.ステレオタイプ

固定観念や思い込みを評価に持ち込んでしまうこと。たとえば、「理系だから論理的思考力に優れる」、「声が小さいので内向的」等が挙げられます。

面接後に「どの点を、なぜそのように評価したのか」を複数名で分析、意見交換すると見極め失敗のリスクが低減可能です。

⑤候補者に合わせて質問内容を調整できる

候補者に質問をする際は、事前に用意した質問リストを一語一句同じ言葉で投げかけるのではなく、候補者が話す内容や反応を見ながら質問の仕方を調整することが求められます。

例えば、自身の弱みについて語ってもらいたいとき、「自身の弱みをどのように捉えていますか?」とストレートに聞く方法だけでなく、「あなたの上司はあなたの弱みをどのように捉えていると思いますか?」と上司の視点から考えてもらうこともできます。

⑥「なぜ?」の問いで、本当の応募者の志向性・考えを把握する

一問一答の質問だけでは、応募者の志向性・考え方を把握することができないことがあります。そこで意識するべきものが「なぜ?」という問いです。

例えば、応募者に退職理由を聞いた場合、「裁量がある仕事がしたかったからです」という回答だけでは、相手の考えが見てきませんよね。だからこそ「なぜそう思うようになったのか」「なぜ裁量がある仕事がしたいのか」という「なぜ」を問う質問を重ねていくことが大切です。

こうした質問によって、そう思うようになった理由や経緯といった深い情報が出てくることがあるので、応募者が大事にしている考え方や価値観を把握していくことができます。

面接官の心構え

面接官として面接に臨む際の心構えは5つあります。いずれも、候補者に好印象を与えて、話しやすい環境をつくるために大切な心構えです。

①会社の代表であるという気持ちで臨む

面接官は、候補者にとって出会う数少ない「志望している会社の人間」であり、未来の同僚・先輩・上司候補です。面接官の言動は候補者の入社動機の形成に大きな影響を与えます。「こういう人がいる会社なら、入社したい」と思ってもらえるよう、会社の代表であるという気持ちを持って臨みましょう。

②候補者がリラックスして話せる場をつくる

面接に臨む候補者は緊張しています。候補者がリラックスして話せるよう、面接会場を整えましょう。可能であれば窓のある広くて明るい部屋を選ぶと良いです。また、候補者にゆったりと座れる椅子と足元の隠れる机を使用してもらうと、緊張がほぐれやすくなります。

③候補者とは選び、選ばれる関係であることを意識する

よく見られる面接の失敗例として、面接官が高圧的で居丈高になってしまうことが挙げられます。これは面接官が、「私が候補者を選ぶ立場なのだ」と誤解していることが原因です。

たとえ面接官が「この候補者に自分たちの仲間になってほしい」と思って内定を出しても、候補者が「この会社では働きたくない」と思えば、内定を辞退されてしまいます。面接官と候補者はどちらが上でも下でもなく、お互いが選び、選ばれる立場なのだということを意識しましょう。候補者のキャリア形成を応援する気持ちで接すると、お互いに納得のいく結果を導くことができます。 

④清潔感を大切にする

面接官が候補者をよく見ているのと同様に、候補者も面接官をあらゆる角度から評価します。そのため、好印象を与えやすいよう外見を整えておきましょう。

身だしなみだけでなく、候補者が使用する受付の内線電話のほこりを払ったり、候補者が通る廊下にごみが落ちていないか気を配ったりすることも大切です。

⑤会社全体で「おもてなし」の気持ちをもつ

面接官は、候補者を「おもてなし」する姿勢を会社全体に示し、協力を仰ぎましょう。面接がある日時を予め社員に知らせ、エレベーターホールやエントランスなど社内ですれ違ったら明るくあいさつをするよう周知しておきます。

気持ちのよいあいさつで候補者に「自分は歓迎されている」という印象を与えることができれば、入社したいという動機の形成にも繋がります。

面接をより実りあるものにするためには、事前準備が大切

面接でよりよい結果を得るためには面接の事前準備は重要です。求める人物像の把握、ロールプレイングによる面接のスキル向上、想定問答集の作成などを行い、面接に備えましょう。ここからは、面接に備えて事前に準備しておくべきポイントを紹介します。

①求める人物像を把握する

面接を始める前に、今回の採用活動で求める人材の要件はどのようなものか、認識を共有しておく必要があるため、出来るだけ詳細な人物像が浮かぶように話し合いの時間を持てると理想的です。

たとえば、求める人材に「コミュニケーション能力」を求める場合、「コミュニケーション能力が高い」という説明だけでは詳細とは言えないため、「コミュニケーション能力」という言葉を使わずに「物おじせず明るい人物」や「じっくりと話を聞き有効な提案ができる人物」など、細かく言語化して検討すると良いでしょう。

②面接官同士で評価基準を決める

求める人物の要件が明確になったら、候補者をどのような尺度で評価するかを決めましょう。5段階評価などの数値で表せる定量評価と面接担当者の所感を記入できるような定性評価の両方を取り入れて、担当者間で情報を共有しやすい形にしておくと良いです。

評価基準を決めておかなければ、面接官が自由な判断で評価をつけることになり、面接官によって評価に大きなブレが生じてしまうため、定量評価で1〜5までの5段階評価とする場合は、「業務に支障のないレベル」を3とするなどして、それぞれの項目について評価基準を決めておきます。

同時に、さまざまな候補者を想定して話し合っておくことも大切です。たとえば、英語の能力について業務に支障のないレベルを3とするならば、「何をもって業務に支障がないとするのか?」「業務での使用経験がなくても、TOEICの点数が高ければ支障がないと判断していいのか?」などを検討し、予めルールを決めておきましょう。

評価基準を基に、評価シートを作成して活用すると評価項目やその基準が明確になり、複数の面接官が面接を行うことで生じる評価のブレを低減することができるので、面接評価シートも作成しておくとより良い面接になります。

③面接スキルの向上

特に現場の社員が面接官を務める場合は、面接に慣れている人ばかりではありません。また、これまでに何度も面接官を経験しているという人のなかにも、なんとなく自己流で面接を行ってきたという人もいます。

場に慣れておくためにも、面接までに予行演習を行いましょう。入室からお見送りに至るまでの一連の流れを面接官同士で行います。面接官と候補者の立場を体験してみることで、スムーズな進行のコツや、話しやすい雰囲気の作り方などに関して気づきも得られます。

④事業内容を説明できるようにしておく

自社が何をしている会社か、自身の部署はどのような業務や役割を担っているのか等を説明できるようにしておきましょう。その際は、何の事業をしているのか(what)や、どのように事業を進めているのか(how)という内容に加え、以下の3つの観点についても説明を行うようにしましょう。

A.ビジョン(理想像。社会、市場、顧客にどうなってほしいのか)

B.ミッション(役割。ビジョンを実現するために、自社は世の中でどのような役割や使命を担うか)

C.バリュー(行動規範。ミッション遂行のために、どのような価値観で仕事をするか)

これらを説明すると、候補者の入社への動機付けに役立ちます。

⑤質問されそうなことをあらかじめ洗い出して、答えを用意しておく

候補者からの質問は、候補者の価値観や不安などが反映されています。そのため、面接で候補者に良い印象を与え、「この会社で働きたい」という動機を形成するためには、候補者からの質問に対する回答を軽視することはできません。

答え方次第で志望度が上がることも、下がることもあるので想定できる質問に対してどのように回答するか、予め考えておきましょう。

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