【リスキリングVol.8】リスキリングに活用できる給付金と助成金制度とは?お得に学び直しができる方法について解説

近年、企業のDX推進にともない、業務において必要となる新たな専門知識・スキル・技能を習得する「リスキリング」が注目されています。政府は、企業や従業員のスキルアップを促し、2022年に「企業のリスキリングに5年間で1兆円を投入して支援する」と表明しました。

もともとあった人材開発支援助成金の制度に、リスキリングに特化した支援コースが設置され、社会人の学び直しに対する経済支援をしています。企業は、生産性の改善や人材確保のためにも「リスキリング」に積極的に取り組む必要があるでしょう。

この記事では、リスキリングに活用できる給付金や助成金制度、お得に学び直しができる方法について詳しく解説します。

リスキリングを支援する給付金について

DX推進にあたり「リスキリング」は必要不可欠です。企業がリスキリングを導入し、従業員の知識習得やスキルアップに取り組むなか、条件にあわせて国や自治体から給付金が受け取れます。ここではリスキリングを支援する給付金・助成金・補助金について説明します。ぜひ活用を検討してください。

給付金

給付金は、国や地方自治体を財源とし、申請して受給条件を満たしていれば受け取れます。返済の義務はありません。リスキリングを支援する給付金として「教育訓練給付制度」があります。厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した労働者に、受講にかかった費用の一部を支給する制度です。

助成金

助成金は、国や地方自治体が支給するもので、なかには要件を満たしていると判断することが厳しいケースもありますが、要件を満たせば必ず受け取れます。またリスキリングを支援する助成金として、厚生労働省が、雇用保険料を財源とした「人材開発支援助成金」を支給しています。

従業員に対して職務に関わる専門性の高い知識やスキルを習得する訓練を実施した際、かかった経費や訓練期間中の賃金の一部を助成します。ほかにも、東京都が支給する「DXリスキリング助成金」があります。

補助金

補助金は、国や地方自治体の政策目的のために予算を組んで交付するため、申請しても必ず受けられるものではありません。政策実現のための用途が限定されています。例えば、新規事業・サービスの導入や、新規政策の促進やサポートに交付されるものです。

リスキリングを支援する補助金として、経済産業省が、「キャリアアップ支援事業費補助金」を支給しています。補助金を受け取るには、事業を実施したあとに実績報告の提出が必要です。ほかにも、地方自治体の「リスキリング補助金」があります

活用するうえでの注意点

補助金・助成金は、いずれもリスキリング施策の着手前には支給されません。社員研修などのリスキリング施策の実施後に支給される「後払い」です。補助金・助成金は、事業者が申請してから実際にお金が支給されるまでの期間が、各都道府県の自治体や労働局などによっても異なるため、かなりの時間を要するでしょう。支給されるまでは自己資金で補わなければならないので注意が必要です。

また、補助金・助成金が支給されるのは、施策の実施期間内に支出した諸経費のみです。施策の実施期間から1日でもずれて発生した諸経費や申請内容に誤りがあった場合は、支給の対象にはなりません。

しっかり支給申請の要件を読み込み、申請に必要な書類や提出期限を守るように心掛けましょう。

リスキリングの教育訓練給付制度

教育訓練給付制度とは、「働く方々の主体的な能力開発やキャリア形成を支援し、雇用の安定と就職の促進を図ることを目的として、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給されるもの」です。

「仕事の知識やスキルを高めたい」「資格を取るための勉強をしたい」「新しい仕事に就きたい」など、労働者のスキルアップを支援するための制度といえるでしょう。教育訓練給付制度は教育訓練にかかる費用の負担を軽くし、知識やスキルを習得してキャリアアップを支援します。

ここでは、リスキリングで給付される3つの教育訓練の種類を詳しく説明します。

引用:教育訓練給付制度|厚生労働省

①一般教育訓練給付金

一般教育訓練給付金は、安定した雇用・就職の促進を支援します。一定の条件を満たす雇用保険の一般被保険者(在職者)または一般被保険者であった方(離職者)が、厚生労働大臣が指定する一般教育訓練を受講し修了した場合、経費の20%(上限10万円)が支給されます。

対象となる一般教育訓練は、以下のものです。

  • 簿記検定
  • TOEIC
  • 履修証明プログラム
  • 中小企業診断士

修士課程を取得する講座など、労働者の職業能力を向上させる支援をする教育訓練と言えるでしょう。

②特定一般教育訓練給付金

特定一般教育訓練給付金は、労働者の再就職やキャリア形成に役立つ講座が対象です。受講にかかる費用のうち、40%(上限20万円)が支給されます。一定レベル以上の情報通信技術に関する資格を目標とする訓練などが対象です。

対象となる特定一般教育訓練は、以下のものです。

  • プロジェクトマネージャー
  • 情報セキュリティスペシャリスト
  • データベーススペシャリスト
  • システム監査技術者

特定一般教育訓練給付金の受給を申請するには、訓練前にキャリアコンサルティングを受けなければなりません。

③専門実践教育訓練給付金

専門実践教育訓練給付金は、労働者の中長期的なキャリア形成を支援する制度です。専門的・実践的な訓練が対象で、給付率は一般教育訓練給付よりも高いです。専門実践教育訓練給付は、訓練中に6ヶ月ごとに支給申請します。訓練期間中から支給を受けられ、教育訓練の経費のうち最大で受講費用の70%(年間上限56万円)が支給されます。

対象となる専門実践教育訓練は、以下のものです。

  • 専門職大学院(MBA、法科大学院など)
  • 専門学校(ビジネス、情報、経理など)
  • スキル習得講座(AI、データサイエンスなど)

専門実践教育訓練給付金の受給を申請するには、訓練前にキャリアコンサルティングを受けなければなりません。

リスキリングの教育訓練給付金の支給対象

リスキリングの教育訓練給付金を受け取るためには、条件があります。「現在雇用保険に3年以上加入している」もしくは「離職後1年以内で、雇用保険に3年以上加入していた」が主な条件です。ここでは、厚生労働省が定める受給対象の条件を詳しく解説します。

雇用保険に加入している会社員

教育訓練給付金は、所得や年齢の制限はありません。前提として、支給を受けるには雇用保険に加入していなければなりません。「1週間の所定労働時間が20時間以上」「31日以上の雇用見込みがある」に当てはまる方は、雇用保険に加入しています。

教育訓練給付金は、雇用保険に加入している会社員やパート・アルバイトなど多くの方が利用できる制度です。

雇用保険に加入していない場合も活用できる

雇用保険に加入していない場合や、過去に加入していたが離職して1年以上経っている場合は、離職中の方が対象となる「求職者支援訓練」などを活用できます。

支給対象になる経費

支給を受けられる対象となる経費は、教育期間に対して支払った入学金と受講料です。受講のための交通費や資格試験の受験費用、パソコン費用などは支給対象の経費には含まれません。

リスキリングの教育訓練給付金の申請方法

教育訓練給付金を受給するために、必要な手続きがあります。教育訓練の種類によって手続きの方法は異なるでしょう。ここでは、教育訓練別に申請方法を説明します。また、給付金受給後の注意点についてもお伝えします。

一般教育訓練給付金

ハローワークへの事前の申請は必要ありません。対象となる講座を受講するとき、入学金や受講料は先に自分で全額支払います。講座を修了後に、ハローワークで給付金の申請をします。

特定一般教育訓練の場合

特定一般教育訓練給付金を受けるためには、訓練前にキャリアコンサルティングを受けなければなりません。キャリアコンサルティングを受けたあと、受講開始日の1ヶ月前までに下記の書類をハローワークに提出します。

  • 受給資格確認表
  • キャリアコンサルティングを受けて交付されたジョブ・カード
  • 過去に専門実践教育訓練および特定一般教育訓練給付を受けた場合は、再受給時報告

これらのほかに、マイナンバーカードと給付金を受け取る金融機関の情報が必要です。

専門実践教育訓練の場合

専門実践教育訓練も特定一般教育訓練と同様に、給付金を受けるためには、訓練前にキャリアコンサルティングを受けなければなりません。キャリアコンサルティングを受けたあと、受講開始日の1ヶ月前までに下記の書類をハローワークに提出します。

  • 受給資格確認表
  • キャリアコンサルティングを受けて交付されたジョブ・カード
  • 過去に専門実践教育訓練および特定一般教育訓練給付を受けた場合は、再受給時報告

これらのほかに、マイナンバーカードと給付金を受け取る金融機関の情報が必要です。

給付金受給後の注意点

教育訓練給付金を1度受給すると、そのあと3年間は講座などを受講しても教育訓練給付金の対象にはなりません。再度利用する場合は、前回の教育訓練給付金の受給日から次の受講開始日まで3年以上の期間を空ける必要があるでしょう。

受講開始日とは、通学制の場合は開講日、通信制の場合は教材などの発送日です。

リスキリングに活用できる人材開発支援助成金

人材開発支援助成金とは、厚生労働省が提供する助成金制度です。企業がリスキリングを導入し、実施した場合に発生する費用の一部を支給しています。職業能力開発を推進する企業をサポートする制度といっていいでしょう。ここでは、人材開発支援助成金を受け取れる支援コースのなかでも、事業展開等リスキリング支援コースについて、詳しく解説します。

事業展開等リスキリング支援コースとは

人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースは、令和4年〜8年度の期間限定で創設されました。新規事業の立ち上げなどにともない、事業主が雇用する労働者に対して新たな分野で必要となる知識およびスキルを習得させるための訓練を支援します。訓練にかかる経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。

支援目的

事業展開等リスキリング支援コースの目的は、国のサポートによって企業が労働者のキャリアアップや人材育成の取り組みをしやすくするためです。人材を育成するには、研修や訓練を実施するリスキリングを導入していかなければなりません。企業の従業員数が多ければ、より費用もかかり企業の負担が大きくなります。

また、対象者は雇用保険の被保険者です。正規雇用労働者でなければ助成金は支給されません。正規雇用労働者のスキルアップを目指し企業の成長をサポートする目的に沿った訓練内容でなければ、対象にならないケースもあるでしょう。

DXリスキリング助成金の条件(東京都)

DXリスキリング助成金は、中小企業人材スキルアップ支援事業とも呼ばれています。中小企業もしくは個人事業主が申請可能な、東京都の助成金制度です。DX推進のためのマネジメント講座、リモートワークやクラウドの整備にともなう情報セキュリティ対策講座などが助成対象訓練に該当します。

ここでは、東京都のDXリスキリング助成金について詳しく紹介します。

給付条件

申請できるのは、中小企業や個人事業主です。以下の表の「資本金額と出資額」または「常時使用する従業員数」に該当しなければなりません。

業種分類資本金額と出資額常時使用する従業員数
小売業・飲食店5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
上記以外の産業3億円以下300以下

引用:令和5年度DXリスキリング助成金| 東京しごと財団 雇用環境整備課

助成金概要

申請を受けるには、以下の申請要件にあてはまらなければ応募できません。

  • 都内に本社または事業所の登記があること
  • 訓練を要する経費を従業員に負担させていないこと
  • 助成を受けようとする訓練については、国や地方公共団体から助成を受けていないこと

訓練の要件としては、中小企業がDXに関するリスキリングを実施する際、外部講師を招いて実施する訓練が挙げられています。また、民間の教育期間等が提供するeラーニング等によって実施する訓練も含まれます。

まとめ

この記事では、リスキリングを支援する給付金や助成金について説明するとともに、教育訓練給付制度について詳しく解説しました。

政府は、企業や従業員のスキルアップを促し、2022年に「企業のリスキリングに5年間で1兆円を投入して支援する」と表明しました。もともとあった、厚生労働省の人材開発支援助成金の制度に、リスキリングに特化した「事業展開等リスキリング支援コース」が設置され、社会人の学び直しに対する経済支援をしています。

リスキリングとは、業務において新たな専門知識・スキル・技能が必要になった時に備えて勉強する取り組みを指します。DX化の推進にともない、IT技術やAIの発達で働き方が大きく変化しました。今まで業務が不要となり新たな仕事に取り組む必要性も出てくるでしょう。

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