育休に関する手続き方法とは?
前回の産休(産前産後休業)についての記事に続いて、今回は育休(育児休業)について説明します。
産休と同様に、それぞれのタイミングで各種手続きが必要となるため、事前に手順を確認しておきましょう。
育休に関するダウンロード資料もあるので、手続きの参考にしてください。
ダウンロードできる資料はこちら
- 育児休業等取得者申出書(Excel)
- 育児休業等取得者申出書見本(PDF)
- 育児休業等終了時報酬月額変更届(Excel)
- 育児休業等終了時報酬月額変更届見本(PDF)
- 養育期間標準報酬月額特例申出書(Excel)
- 養育期間標準報酬月額特例申出書見本(PDF)
- チェックリスト_(初回)育児休業給付金支給申請書(PDF)
- チェックリスト_育児休業等取得者申出書(PDF)
- チェックリスト_育児休業等終了時報酬月額変更届(PDF)
- チェックリスト_養育期間標準報酬月額特例申出書(PDF)
育児休業(育休)とは?
育児休業(育休)とは、1歳に満たない子を養育するために休業する制度のことを指します。
育休は育児・介護休業法で認められた労働者の権利のため、企業は基本的に従業員からの育休の申し出を拒むことはできません。産前産後休業(産休)と同様、男女雇用機会均等法にて、事業主は育児休業の取得や申し出を理由に不利益な扱いをしてはならないと定められています。
また、女性と男性で育休を取得できるタイミングも異なります。それぞれの取得できる時期は以下の通りです。
<育休を取得できるタイミング>
女性 | 産後8週間の産後休業が終了した翌日から |
男性 | 子どもが生まれた日から |
原則、育休取得可能期間は子が1歳に達する日の前日までですが、法の定めにより、保育所が見つからないなど特別な事情がある場合は1歳6カ月や2歳まで延長できます。
特別な事情による延長はやむを得ないため、企業としては延長を想定して人員配置を考えておくと良いでしょう。また、育休取得者と連絡を取り合って随時状況を把握しておくことも大切です。
育休取得のための条件とは?
育休を取得するにはさまざまな条件があり、誰もが取得できるとは限りません。取得できる者については法律で明示されています。
以下の表にて対象となる者についてまとめているので、確認しましょう。
<育休の対象となる者>
・労働者(日々雇用を除く) |
・パートや契約社員など有期契約労働者のうち以下の2つを満たしている者 ①勤続1年以上である ②子が1歳6カ月に達する日までに労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の 期間が満了することが明らかでない |
上記②の『子が1歳6ヶ月に達する日までに労働契約の期間が満了することが明らかでない』と判断するためには以下の2点を満たす必要があります。
- 育児休業の申出があった時点で、契約の更新がないことが明らかにされていない
- 労働契約を更新しない旨を明示していない
また、労使協定を結んでいる場合は、以下に当てはまる従業員を適用除外とすることが可能です。
・入社1年未満の者 |
・申出の日から1年以内に雇用期間が終了することが明らかである者 (1歳6カ月までの育児休業の場合は、6カ月以内に雇用期間が終了する) |
・1週間の所定労働日数が2日以下の者 |
※従業員の配偶者が専業主婦(夫)もしくは育休中の場合は、労使協定を結んでいても対象外にできません。
育休で必要となる対応・手続きとは?
従業員の育休取得に対応するためには、育休前から育休後まで様々な手続きが必要です。
手続きをスムーズに進めるために以下の手順を確認しておきましょう。
①従業員から育休取得申請を受けた時(=育休前)
①-1『育児休業取扱通知書』を交付する
従業員から育休開始予定日の1カ月前までに『育児休業申出書』を受け取り、内容を確認したら、2週間以内に『育児休業取扱通知書』を交付しなければなりません。
『育児休業取扱通知書』には以下4つの記載が必要です。
- 育児休業申出を受理する旨
- 育児休業開始日及び育児休業終了予定日
- 育児休業申出を拒む場合には、その旨及びその理由
- 育休中の待遇や復職後の賃金・配置等の労働条件
『育児休業取扱通知書』は基本的に書面で交付しますが、従業員からの希望があれば電子メールやファックスでも構いません。
②従業員が育休を取得している期間中の手続き
②-1『育児休業等取得者申出書』を作成・提出する
育児休業中は、育休開始月から終了予定月の前月まで(育休終了日が月の末日の場合は育休終了月まで)の従業員と企業側双方の社会保険料(健康保険、厚生年金)が免除されます。
その手続きは、企業が『育児休業等取得者申出書』を日本年金機構(事務センター)へ提出することで行います。
産休時と同様に、免除期間中の被保険者としての資格や将来受け取る年金額は変わりません。
<育児休業等取得者申出書の提出について>
提出先 | 日本年金機構(事務センター) |
提出時期(提出期限) | 育児休業期間中または育児休業等終了日から起算して1月以内の期間 |
育児休業に関する社会保険料は、最大で子どもが3歳に達する日まで免除が可能です。
休業期間の延長や当初の予定よりも前に休業を終了する場合は、『育児休業等取得者申出書』上の『A.延長』『B.終了』という欄に終了(予定)日を記入して提出しましょう。
②-2『育児休業給付金』の手続きをする
『育児休業給付金』とは、男女問わず雇用保険の被保険者を対象とした育児休業期間中に収入が減る従業員の生活を支える制度です。
手続きは基本的に企業側が行いますが、やむをえない理由がある場合は従業員が提出することも可能です。
原則、支給期間は子が1歳になるまでですが、保育所が見つからない等の場合は1歳6カ月または2歳まで延長できます。
<育児休業給付金の手続きについて>
提出書類 (初回の育休) | 1.雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 2.育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書 3.賃金台帳、労働者名簿、出勤簿又はタイムカード等 4.母子手帳など育児を行っている事実を確認できる書類 |
提出書類 (2回目以降) | 1.育児休業給付支給申請書 2.賃金台帳、出勤簿又はタイムカード |
提出先 | ハローワーク |
提出時期 | 育児休業に入るとき |
受給要件 | ・雇用保険に加入している ・育休前の2年間で賃金支払基礎日数が 11日以上ある月が12カ月以上ある ・育休期間中、1カ月毎に休業開始前の1カ月の賃金の 8割以上が支払われていない ・育休期間中に就業している日数が各1カ月に10日 (10日を超える場合は、就業時間が80時間)以下 |
育休開始前から退職の予定がある従業員は支給対象外となります。
雇用期間に定めのあるパートや契約社員の場合は上記の受給要件に加えて以下の2点を満たしていなければなりません。
- 勤続1年以上である
- 子が1歳6カ月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでない
また、2回目以降は2カ月に1回申請を行わなければなりません。
定期的な申請が必要なため、申請漏れがないように期限管理には気を付けましょう。
③育児休業の期間を延長する場合
保育所が見つからないなどの理由で延長する場合は、従業員から『不承諾通知書』や『待機通知書』等、保育所に入所できなかったことを示す書類を提出してもらう必要があります。
各通知書の名称は自治体によって異なるため、随時確認しましょう。
④育児休業が予定より早く終了した場合
④-1『育児休業取得者申出書終了届』を作成・提出する
育児休業を予定より早く終了した場合は『育児休業取得者申出書終了届』を日本年金機構(事務センター)へ提出します。
※予定通りに育児休業を終了した場合は提出する必要はありません。
また、企業独自に設けた『育児休業復職届』等の職場復帰に関連する書類がある場合は、規程に則り従業員に提出してもらいましょう。
⑤予定通り育児休業を終えた時
⑤-1『育児休業終了時報酬月額変更届』を作成・提出する
育児休業終了後は短時間勤務等により、産休・育休取得以前より給与が下がることもあります。その場合、以下の改定条件に当てはまる対象者は標準報酬月額を改定することができます。
<育児休業終了時の社会保険料の随時改定について>
提出書類 | 健康保険・厚生年金保険 育児休業終了時報酬月額変更届 |
提出先 | 日本年金機構(事務センター)や健康保険組合 |
対象者 | 3歳未満の子どもを養育している被保険者 |
改定条件 | ・育児休業終了後3ヶ月間に支給された給与の平均額が 従前の標準報酬月額と比較して1等級以上の差がある場合 ・育児休業終了日の翌日の属する月以後3ヶ月のうち、 少なくとも1ヶ月は出勤した日が17日以上ある |
改定月 | 育児休業終了後4ヶ月目 |
⑤-2『厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申し出』の手続きをする
上述の通り、標準報酬月額を変更すると控除される社会保険料は低く抑えられますが、その分、将来受け取る年金額に反映されてしまいます。
そこで、復職後3歳までの子どもを養育する期間において、短時間勤務などにおける標準報酬月額が産休・育休取得以前の標準報酬月額と比較して下がった場合、将来の年金額に従前の標準報酬月額が反映されるようにみなす特例制度が設けられています。
前項の『育児休業終了時報酬月額変更届』と併せて申請することにより、実際に給与から控除される保険料を抑えながら、年金額は子どもを養育する前の報酬月額で算出されるようになります。
この特例は子どもの養育が始まった月から子が3歳になる月の前月までが対象です。
手続きには『厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書』と戸籍謄本等、子どもの続柄が確認できる書類や従業員との同居を確認するための住民票の写しを提出する必要があります。
まとめ
育休に関する手続きは、支給の条件が細かかったり、内容が複雑だったりと分かりづらい部分があります。だからこそ、人事担当者はしっかり仕組みを理解することが大切です。
また、産休の手続きと同様に、法改正が頻繁にあるため随時チェックするように心がけましょう。