人材開発において「研修」は重要な手法ですが、数ある方法のひとつにしかすぎません。学習方法は多様化を続け、新しい学び方もどんどん作られています。人材開発担当者や人材・総務担当者は、研修だけでなくさまざまな学習方法に目を向けて、それぞれの特徴を把握することが求められます。
以下では、人材開発における学習方法の多様化と、具体的な事例を紹介します。
学習方法は「学習ツール」の多様化によって実現している
学習方法は、そこで使用される「学習ツール」の多様化によってその数を増やしています。たとえば近年で代表的な学習ツールには、以下の3つが挙げられます。
- セミナー
- e-learning
- 通信教育講座
セミナー
セミナーは一般的に、社外で開催される「公開型セミナー」へ従業員を参加させるケースが多いです。参加希望者が出席し、そこで専門的なスキルなどを学んで会社の業務で実践する点が特徴です。セミナーは研修とは異なり、主催者があらかじめテーマを決定し、それに関心のある人が自主的に参加する「勉強会」を意味します。
セミナー講師が持つ独自の知見や価値観を学べる一方で、実際の業務と直接的に関係のない内容を学ぶ可能性があります。必ずしも自社の業務や従業員の成長に活かせない点は、セミナーのデメリットです。
e-learning
e-learningとは、電子媒体を使って学習を行う方法です。パソコン・スマートフォン・タブレットなどを使って、事前に用意された内容を自主的に学習する点が特徴です。e-learningでは業務に関係するあらゆる知識・技術を、的確に学べるメリットがあります。学習範囲も幅広いため、新人の育成などにも向いています。
昨今はコンプライアンスや社内ルールにおける知識を、e-learningで学習するケースが多いです。e-learningは汎用性の高い知識を、多くの人材に教えられることに適している点から、さまざまな会社に導入されています。しかし、特定の知識・技術を深くまで学ぶことは難しく、専門スキルを習得して従業員の成長を促すのは不向きです。
通信教育講座
最後に通信教育講座は、特定の分野を体系的に学べる学習方法として注目されています。一般的に通信教育講座は、2〜6か月程度の時間をかけて実施されます。1つの分野を深くまで学びたい人にとっては、通信教育講座が有効に働く可能性もあります。
しかし、長期間の学習が前提となるため、仕事をしながら時間を作るのが難しく、途中で挫折してしまうケースが多い点はデメリットです。
学習方法の多様化による代表的な学習方法
このように学習ツールが多様化していることから、人材開発の担当者や人事・総務担当者は、それぞれの特徴をしっかりと把握して準備を進める必要があります。
学びのツールが増えるにつれて、学習方法そのものの多様化が進んでいます。コロナ禍によってリモートワークが一般化したことから、研修内容もデジタル媒体を通して実施されるケースが増えました。従来のリアルでの研修よりも、昨今ではオンラインでの受講を望む声も増え、ニーズの変化が実感できます。
そこで以下では研修という方法を基準に、代表的な学習方法のメリットとデメリットを紹介します。具体的には、以下の学習方法について解説します。
- リアルでの研修
- オンラインでの研修
- オンデマンド研修
リアルでの研修
リアルでの研修は、講師が直接受講者と対面し、目の前で研修を実施する方法です。講師と受講者だけでなく、受講者同士によるディスカッションも可能なため、自分に足りない要素や気づけていないことを発見するきっかけを得られる点がメリットです。
ディスカッションはオンラインでも可能ですが、実際に人と人とが直接言葉を交わす形式の方が、議論が活性化してさまざまな意見を発見できます。そうした「臨場感」を活用できる点も、リアルでの研修が持つメリットになるでしょう。
しかし、リアルでの研修は場所の制約を受けるため、受講者によっては負担となるケースがあります。研修場所が遠い受講者は、移動によって1日が丸ごと潰れてしまう可能性もあります。時間と場所に問題が発生しやすい点は、リアルでの研修が持つデメリットになるでしょう。
オンラインでの研修
その点、オンライン研修は場所を気にすることなく、どこからでも参加できる点がメリットです。講師とのコミュニケーションだけでなく、ディスカッション専用の部屋を作成することで、受講者間でのコミュニケーションも可能です。しかし、リアルの研修と比較すると臨場感は弱くなり、一定のレベル以上の交流は難しいです。
また、ネット環境や機材トラブルなどによって、参加できなくなるリスクもあります。何よりも長時間パソコンやタブレットを見つめ続けるのは、想像以上の労力となるため、ストレスが増えるデメリットも懸念されます。
オンデマンド研修
そこで注目されているのが、事前に作成した動画を視聴する形で学習を行うオンデマンド研修です。オンデマンド研修では、受講者が自由に勉強の時間を決められます。移動中や休憩中などの時間を利用したり、休日に決まったタイミングで勉強したりと、さまざまな方法が実践可能です。
時間や場所に拘束されない点は、オンデマンド研修のメリットです。しかし、受講した内容をその場で質問できなかったり、1人で学習するためほかの人からの刺激を得られず、気づきにつながらないといったデメリットもあります。
このように学習方法はさまざまなスタイルを取り入れて、多様化しているのが現状です。
オンラインによる学習方法は今後も根付いていく
学習方法の多様化は、今後も続いていくと予想されます。特に知識を与える形の研修は、オンライン化が進むと考えられるでしょう。オンラインによって学習のハードルが下がれば、研修に参加する人材が増え、総合的なスキルアップにつながる可能性もあります。
一方で、議論によって得られるものが多い研修の場合には、今後もリアルでの開催が重視されるでしょう。リアルで人と人とがつながれる空間には、そこでしか学べない多くの知識があります。そのためオンライン学習が普及しても、リアルでの研修が衰退する理由にはなりません。
オンラインとリアルの研修に、明確な優劣はありません。そのため人材開発の担当者や人事・総務担当者は、目的に合わせて学習方法を使い分けることがポイントです。オンラインによる学習方法が今後も根付いていくことを想定し、そのうえで自社に最適な手法を見出していくことが求められます。
まとめ
従業員がそれぞれの人材開発のゴールを達成するには、最適な学習方法を提案する必要があります。しかし、学習方法は多様化が進んでいるため、選択が難しいのが現状です。そこで人材開発担当者や人事・総務担当者は、まず学習方法が多様化している現状を把握し、それぞれの方法についての基本を確認しましょう。
そのうえで各学習方法のメリット・デメリットをチェックし、自社の目的に合ったものを選択することが重要です。学習方法の多様化を理解することで、人材開発担当者や人事・総務担当者が何をすべきか明確にできるでしょう。
次の章では、「研修の内製化/外注の判断の際に考えるべきポイント」というテーマに解説します。