【人材開発Vol.6】個人の価値観の多様化により人材開発のゴールも多様化している

会社を支える従業員個人の価値観は、近年多様化しています。全員が同じ目標や目的を持って仕事をするのではなく、それぞれが持つ価値観に応じたゴールを設定するケースが増えています。人材開発担当者や人事・総務担当者は、この従業員の価値観の多様化を理解したうえで、適切な支援を実施することが求められます。

以下では、個人の価値観が多様化している現状と、対応方法について解説します。

従業員の数だけ人材開発のゴールがある

会社は組織を構成する「財産」となる従業員の成長に対して、しっかりと向き合う義務があります。従業員が組織にとって必要な成果を獲得し、自身の成長を実感できる環境を整備することが、会社に求められる役割の1つです。個々の従業員の成長を、会社全体の成長として実現していくことが、人材開発にとって重要な視点となります。

しかし、研修カリキュラムについては「同じテーマでも、研修講師によって伝えたいことが違うため、まったく異なる研修内容になるケースもある」と考えられるため、仮に講師の数だけ研修があるのなら、同様に従業員の数だけゴールがあると考えられます。

すると、「従業員が抱える成長やゴール、もしくはそれを実感する方法、さらに会社全体の成長にどのような形で貢献していきたいのかは、従業員ごとに大きく変わると想定できるのでは」と、疑問に思う人もいるでしょう。この疑問に関しては、間違いないと言えます。

時代の変化によって、人々の価値観も大きく変わりました。会社に入って働く理由も、お金や自己成長など、多種多様なものに変わっています。

昭和の時代に遡ると、会社に入ってからの人生には、「課長くらいには出世する」「結婚して子どもを授かる」「退職後には郊外に一軒家を立てて何不自由なく暮らす」といった、「標準的サラリーマン」の人生設計を描く人が多かったと想像できます。

しかし、平成を経て令和の時代になると、昭和の人材を支えていた終身雇用制度は崩壊しました。昨今は1つの会社に縛られず、副業やフリーランスでの働き方を選択する人材も増えています。結果的に実力のある人材ほど、会社に頼らなくても仕事をしていける時代になっていると言えます。

今後もこのような流れが継続すると、従来の働き方から逸脱していく人材が増えると予想されます。そのため会社における人材開発の難易度は高まっている事実を認めて、その難題を克服する方法を確立させる必要があります。

従業員の数だけ人材開発のゴールがあることを理解したうえで、その現状に立ち向かっていくための手法を導き出すのが、人材開発の担当者が抱える使命です。

特に、社内研修を企画する場合は、どの階層・職種の受講者にどの研修テーマを受講させるか、詳細なカリキュラム内容をどのように選定するか、などといったことを検討する必要があります。

人材開発のゴールをまとめるための「最大公約数」を考える

人材開発を成功させるには、ゴールの設定が欠かせません。しかし、先に解説した通り、個々の価値観は多様化し、現在では従業員ごとにゴールが存在するといっても過言ではありません。そこで人材開発の担当者は、従業員それぞれが意識する異なるゴールを、どのようにしてまとめるか「最大公約数」を考える必要があります。

具体的には以下のような方法で、従業員と向き合いながらゴールの設定を目指します。

  • 1 on 1ミーティング
  • コーチング
  • カウンセリング
  • OJT教育

これらは1つの方法として有効ですが、研修などの人材開発の現場においては、個々の従業員が持つすべてのゴールに平等に向き合うのは、ほとんど不可能だと考えられます。しかし、不可能であると考えられるからといって、これらの方法を「実行しない」という選択肢はありえません。

個々のゴールに向き合うことを辞めてしまうと、ボトム層とトップ層の両方が得をしない「中間」の研修内容が実践される可能性が高まります。ボトム層に合わせた内容になると、トップ層が納得しなくなる。逆にトップ層に合わせて研修内容を構築すると、今度はボトム層がメリットを実感できなくなります。

こういった複数の問題点を考慮し、いかにして回避できるかが、人材開発において重要となります。誰にもメリットがなく、成長を実感できない施策は、人材開発において最悪の結果となります。しかし、参加した全員が平等に効果を実感できる取り組みは、現実的なものではありません。

そういった八方塞がりにも近い現状で、可能な限りベストな選択をすることが、人材開発の担当者の役割です。そのためには、できるだけ多くの人材が成長を実感できるように、最適な「最大公約数」を描き出すことが重要です。

たとえば、人材開発のゴールをまとめる際に、「参加させる受講者」や「カリキュラムの選定」には以下のようなポイントを考慮することが重要です。

参加させる受講者の選定ポイント

受講者の職位・部門の特定どのような人材に焦点を当てるか、特定の職位や部門に向けて開発を行うのかを明確にしましょう。例えば、新入社員、マネージャー、リーダーなどの職位。または、事務、営業、製造などの部門で分け、一番研修効果を発揮できる受講者を選定しましょう。
スキルやニーズの分析対象となる受講者層のスキルセットやニーズを把握し、それに基づいてカリキュラムを選定しましょう。従業員の成績評価やフィードバックも参考にします。
経験レベルの考慮受講者の経験レベルに応じてカリキュラムの難易度を調整しましょう。初心者向けの基本的な内容から、上級者向けの専門的なトピックまで柔軟に対応する内容が好ましいです。
多様性の尊重異なるバックグラウンド、文化、性別などを持つ受講者を考慮し、多様性を尊重するカリキュラムを選定しまましょう。これにより、異なる視点からの学びを促進します。
成績評価の透明性成績評価基準を透明化し、受講者が目標に向かって進捗を確認できるようにしましょう。明確なフィードバックを提供し、成果に対する評価が公正であることを保証します。

カリキュラム選定のポイント

ゴールの定義まず、人材開発のゴールを具体的に定義し、それに基づいてカリキュラムを選定しましょう。ゴールに合致するトピックやスキルを選定します。
柔軟性と適応力の向上カリキュラムには急激な変化への対応や柔軟性を向上させる要素を組み込みましょう。適応力や柔軟性の向上がゴールであれば、それを重点的にカバーします。
実践的なアプローチ理論だけでなく、実践的な演習やプロジェクトを組み込むことで、受講者が学んだ知識やスキルを実際の業務に応用できるようにしましょう。
新しい技術やトレンドの取り込み産業や分野の最新の技術やトレンドを反映させ、受講者が最新の情報やベストプラクティスにアクセスできるようにしましょう。
参加型の学習ディスカッション、グループワーク、プレゼンテーションなど、受講者が積極的に参加できる形式を取り入れましょう。参加型の学習は理解度や記憶に良い影響を与えます。
継続的なフィードバックカリキュラム全体を通じて継続的なフィードバック機会を設け、受講者の理解度や進捗を把握し、必要に応じてカリキュラムを調整しましょう。

これらのポイントを考慮することで、目標に合致し、多様な受講者層に適した人材開発のゴールをまとめることができます。

多くの従業員のゴールを内包した最大公約数的な研修カリキュラムを選定することで、成果を実感しやすくなります。最適な最大公約数の設定には、対象となる受講者を絞り込む際の手段としても活用できます。

研修の受講者を選ぶ際には、階層などの年次で分割しても、職位・部門などの役割で分割しても、それぞれメリット・デメリットがあります。そのため人材開発の担当者は、メリット・デメリットの内容を把握し、どれが自社にとってもっとも効果的な結果を生み出すのが選択する必要があります。さまざまな要素を分析し、選択した根拠を説明できる準備をしたうえで、勇気ある決断力で具体的な内容を決定しましょう。

このような一連の流れを成功させるためにも、人材開発のゴールをまとめるための「最大公約数」を考える必要があります。

まとめ

昨今は個人の価値観が多様し、それはビジネスの現場にも影響しています。従来のように型通りの目標を目指すのではなく、それぞれの従業員が自分の意思を持って目標を決定し、そのために必要な行動を考えていくのが一般的となりつつあります。

人材開発の担当者や人事・総務担当者はその点を考慮して、人材開発の計画を立てることが求められています。個人の価値観が多様化している現状に合わせて、会社側も人材開発の方法を変えていくことが重要です。

次の章では、「学習方法が多様化している」をテーマに解説します。