【人材開発Vol.1】人材開発とはそもそも何か

人材開発について考える際に、最初に課題となるのが「そもそも人材開発とは何か」という基本的な疑問です。人材開発という分野にマニュアルはなく、研修をするだけで何かが変わるわけではありません。人材開発がどうして重要なのか、「経営者」「人事・教育担当者」「従業員」のそれぞれが正確に理解しておくことがポイントです。

以下では、「人材開発とは何か」という基本について解説します。

人材開発とは従業員の仕事への意識を高めて、アウトプットの質を向上させること

人材開発とは、従業員個人の仕事への意識を高めて、アウトプットの質を向上させることを指します。「教育・訓練によって知識を増やし、スキルアップを目指すこと」が人材開発の基本です。知識とスキルのどちらか一方を伸ばしても、上手くアウトプットの質を向上させることはできません。

一般的に、意識や知識に関するものを「教育」、スキルに関するものを「訓練」と区別して人材開発を行いますが、「意識や知識」と「スキル」の両方を効果的に結びつけて教育・訓練にすることによって、大きな成果に繋がります。

スキルだけ高くても、仕事への意識や知識が低ければ、社内にマイナスの影響を与えてしまう可能性があります。人材開発にしっかりと取り組んでいる会社であればあるほど、Off-JTなども活用して、従業員の意識や知識、スキルを並行して高めることを大切にしていかなければなりません。

経営者、人事・教育担当者の皆さんは、「組織にとって大切な経営資源である従業員にバランスよく教育・訓練を実施し、アウトプットの最大化を実現すること」が人材開発の基本であることと、それが「組織の人事戦略として行うこと」が重要であるということを理解する必要があります。

人材育成と人材開発の違い

人材育成と人材開発は、同じ意味で使用されることも多いです。しかし、企業における人材育成とは、「従業員を経営戦略の実現=組織目標の達成に貢献できる人材として育成すること」を意味します。

教育や訓練だけでなく、組織に貢献する意識や自立性・主体性といった内面的なスキルを育て、長期的な視点を持って実現していく方法と解釈できます。

つまり、『「人材育成」という長期的な目標を達成するための最適な手段が「人材開発」である』という位置付けで捉えることができます。

そのため「人材育成=より長期的な目標達成のために人材の育成状況を人事戦略として考えること」「人材開発=個々の育成状況に応じ、短期的な課題解決の施策として教育・訓練の内容を考えること」と分けて設定し、それぞれの目標達成を目指すことが重要です。

この人材育成と人材開発の違いを理解し、前者は「経営層を中心に会社全体で考えていくこと」後者は「人事・教育担当者に期待される役割として、経営者と従業員の双方の声に耳を傾け考えること」と捉えて、人材開発に取り組むことが重要です。

人材開発では理想の人材像を「引き算」で考える

人材開発について課題のある企業は、「どんな人材に育てるべきか」というゴールが曖昧なことも多いです。ゴールが明確になっていない状態で研修を実施しても、成果を出すことは難しいでしょう。そこで重要となるのが、「引き算」を用いたゴールの把握です。

たとえば、あなたが下記の人材開発の場面に立ったことを想像してみましょう。

  1. はじめて、自社の人材育成の課題を分析するように指示を受けた
  2. はじめて、従業員への社員研修を企画するように指示を受けた
  3. はじめて、今後の人材開発プランを設計するように指示を受けた

人材開発について、何も知らない状態で上記のような指示を受けてしまうと、何から手を付けて良いか分からなくなるかもしれませんが、「人材育成」と「人材開発」の違いを理解した今では、この順番に理由があることに気が付いたのではないでしょうか?

長期的な視点で考えたときに、現在の人材育成の課題について、分析を求められているものが①です。分析した結果、発見した課題を解決する一つの手段として社員研修を企画することが②です。さらに、研修のゴールを具体的に設定し、その効果を測定、中長期的なプランで人材開発を考えることが③という流れになっています。

この流れに沿って、人材開発を進めていくことが、人事・教育担当者に期待される役割と考えましょう。

目標となるゴールを設定し、そこから従業員が持つ現在のスキルを引き算することで、課題ややるべきことが見えてきます。ゴールは従業員の階層(能力や役職)ごとに考え、そこに至るまでに必要な要素を明確にすることが最初のステップです。

ゴールとなる人材像が明確になっていない状態で、いくら教育・訓練に時間と熱意を費やしたとしても、期待する効果は決して得られません。

人材開発を行う際に、人事・教育担当者は、少なくともこの理想の人材像を「引き算」で考えるということを常に意識しておきましょう。

足りない要素を意識し、それを埋めるための方法を考える思考を持つのが、人材開発における理想の人材像を理解するポイントです。

またゴールや課題が異なれば、人材開発の方法も変わります。組織の人材育成の課題に応じたゴールを明確にし、それぞれの現在地=問題点を確かめることが、人事・教育担当者にとって最初に解決すべき課題となります。

またそれぞれの課題をふまえた上で、それぞれに異なる最適な解決策を定めていくことが、人事・教育担当者としての、次の仕事になります。

意識や知識、スキルも十分な管理職には、ディスカッションを重視した課題解決型の研修も十分に効果がありますが、どちらも足りない新入社員に同じことを求めても、新しいアイデアは生まれるかもしれませんが、机上の空論で実りの少ない時間を過ごす結果になりかねません。

新入社員に対しては、何においても仕事に対する意識や、業種や職種に関わる専門的な知識とスキル、経験の量を増やすことが大切です。

そして、継続的に人材開発を行うことで、意識や知識、スキルを並行して高め、アウトプットの質を高めることが重要です。

人材開発を行う上で大切なことは、「この従業員には何が足りなくて、どうすればその足りないものを埋められるのか」という思考を持つことです。

社員研修は不足を埋める手段の一つに過ぎず、課題解決に研修が適さない場合も同様に存在します。人材開発の手段と目的をしっかりと見極めることが、人事・教育担当者に期待されている役割である、ということを意識することから、まずは始めてみましょう。

まとめ

人材開発とは、「従業員個人の仕事への意識を高めて、アウトプットの質を向上させること」です。人材開発の手法としては、主に「教育・訓練によって知識を増やし、スキルアップを目指すこと」が基本となります。

また「人材育成=より長期的な目標達成のために人材の育成状況を人事戦略として考えること」「人材開発=個々の育成状況に応じ、短期的な課題解決の施策として教育・訓練の内容を考えること」といえます。

そのため、企業における人材育成とは、「従業員を経営戦略の実現=組織目標の達成に貢献できる人材として育成すること」を指すためには、人材開発を実践する際には、『人材育成という長期的な目標達成のための具体的なゴールとそこに至るまでの道筋を明確にする「引き算」の考え方』が重要です。

人材開発の担当者はもちろん、従業員それぞれが人材開発の基本を把握することで、「いま」何をするべきかがわかります。どれだけ技術が発達しても、仕事をするのは結局のところ人のため、結果的に「人材開発」という取り組みが、企業の成長にとって何よりも重要だと考えられます。

次の章では、さらに具体的に「人材開発に研修は必要なのか?」というテーマについて解説します。