【人材開発Vol.2】人材開発に研修は必要なのか?

人材開発を進めるにあたって、社員に研修を実施するケースは多いです。しかし、人事担当者および教育担当者が、研修の必要性を理解できていないと、人材開発で成果を出すことは難しいでしょう。

以下では、研修がなぜ人材開発に必要なのか解説します。

研修は人材開発の選択肢のひとつにすぎない

前提として、研修は人材開発の課題を解決する選択肢のひとつにすぎません。理想の人材像をゴールに設定したなら、複数の選択肢を組み合わせて効果を高めるのが重要です。

例えば、営業職として若手社員を成長にさせるための選択肢には、外部講師を招いて営業力向上研修を受講させる方法もあれば、営業マンのスキルやトークスクリプトをブラッシュアップする、営業リストを見直すために、上司や先輩、同期とのロールプレイングを通じて、OJTによる個別指導による改善を行うなども考えられます。しかし、これらはどれも選択肢のひとつです。そもそも、営業管理ツールがなければ、PDCAを回すことができないなどの課題も残ります。

このように、人材開発において「研修」は手段の一つに過ぎないため、理想の人材を育てるゴールのために、複数の取り組みが互いの要素を効果的に補い合える施策の構築が、人材開発の成功につながります。

日々の人材開発は、OJTによる部分がかなりを占めています。実際のビジネスシーンでは、上司や先輩から直接指導を受ける経験が、若手社員にとって主な教育・成長の機会となっていることは言うまでもないでしょう。

余談ですが、コロナ禍によるリモートワークが増えたことで、OJTの不足を実感する担当者は非常に多く、対面でリアルに教わる経験の大切さを再認識する必要があります。

また、単に知識を身に付けるだけであれば、マニュアルの活用やe-ラーニングなどの方法も一定の効果を発揮します。何より、空き時間を活用して自由に学べる点が最大の利点のため、人材開発・社員教育にマニュアルの活用やe-ラーニングを採用する企業は増加傾向にあります。

さらに、業務に直結する教育や研修だけが人材育成の方法ではありません。変化の激しい現代のビジネスシーンにおいては、非常に多くの社員が不安やストレスを感じて仕事に取り組んでいます。

人事面談による「コーチングやカウンセリングなどの方法も活用して、社員のメンタルケアを行う」ということも、人材開発に欠かせない選択肢の一つと言えるでしょう。

人材開発において研修と並んで重要視される施策

上記のように、人材開発の現場では、さまざまな施策が研修と並ぶ選択肢として評価されています。

人材育成という長期的な視野に立ったとき、さまざまな選択肢を効果的に組み合わせることで、「従業員を経営戦略の実現=組織目標の達成に貢献できる人材像に近づけていく」ということの重要性は理解できたと思います。

それでも、人材開発という個々の場面、短期的な解決策を必要とする状況においては、どの選択肢が最適なのか?ということは、また別問題なのでは?という疑問を持たれる方もいるでしょう。

人材開発を実施する際には、いくつもの選択肢が検討されます。しかし、人材開発で個々の従業員が抱える課題を短期で解決する必要がある場合、どの選択肢が最適なのかは変わります。

人は長い成長期間のなかで、知識をインプットする時期、アウトプットを実践する時期など、それぞれの成長曲線で下記のような最適な施策があります。

研修と並んで重要視される施策の時期と例

  1. 知識をインプットする時期:マニュアル活用、e-ラーニングなど
  2. アウトプットを実践する時期:上司や先輩、同期とのロールプレイングなど
  3. メンタルケアを行う時期:人事面談によりコーチングやカウンセリングなど

このような「複数の選択肢」と「社員研修」を組み合わせて、それぞれの施策の相乗効果を充分に発揮させることが、人事・教育担当者にとって重要と言えます。

今必要な施策を見極めるのが人材開発担当者の役割

人事担当者および教育担当者の皆さんにとって、「人材育成の目標に対して、個々の従業員がどの時期にいるのか見極めて、複数の選択肢の中から、今人材開発に必要な施策を選択する」ということが、次のステップです。

また、研修はその中の一つの選択肢として「必要とされるタイミングで、実施体制を整える」ということが、人材開発を行う上で重要なポイントになります。

人材開発に研修が必要だと自信を持って答えられる時に研修を企画しよう

人材開発にとって「研修」は必要です。しかし、それがどんなタイミングでも最適だという考えは間違いだといえるでしょう。

研修をするだけで、人材開発に関するすべての課題が解決するわけではありません。研修は「人材開発のきっかけづくり」として優れた方法である一方で、その効果を推しはかることが難しい場合もあります。

「よく理解していないけど、とりあえず研修をする」という姿勢では、現在の課題を分析できず成果の出る研修が実施できない可能性があります。人材開発の課題の解像度が低ければ、課題解決はほとんど不可能です。

前章で解説した「引き算でゴールを導き出す」ことができていない状態で、どれだけ熱のこもった研修をしても、受講生に刺さる内容にはならないでしょう。人材育成の課題、つまりゴールが存在しないので、解決できないのも当然です。

人材開発で研修の効果を引き出すには、研修を企画する側と、受講する側が共通の認識・理解を持っている必要があります。人材開発の担当者となった場合、「単に研修を実施すること」が役割と考えるのではなく、「人材開発に研修が必要だ」と自信を持って答えられるように、企業にとっての課題を理解して研修を企画することが重要です。

まとめ

人材開発にとって、研修は必要です。しかし、必ずしもそれが現時点での最適な施策になるとは限りません。

人材開発では、研修以外の選択肢もあることを把握し、それぞれのメリットと比較したうえで、「それでも、やはり研修が有効だ」と答えが出せたときに、高い効果が期待できます。

人材開発に携わる担当者は、まず前提として「研修はひとつの選択肢にすぎない」ことを理解し、「人材育成の目標に対して、個々の従業員がどの時期にいるのかを見極め、それぞれの時期に合わせて、人材開発に最適な方法を選択すること」が重要です。

「とりあえず研修をすればいい」という考えはこの機会に捨てて、「自信を持って研修が必要だ」というために課題を整理してみましょう。

次の章では、「研修を企画・設計するってどういうこと?」というテーマを解説します。