【人材開発Vol.3】研修を企画・設計するってどういうこと?

人材開発の選択肢として社内研修を実施することを決めたら、次は具体的な研修内容を企画・設計する必要があります。また、その具体的な研修内容を企画・設計するためには、企画・設計の方法や必要性を理解し、課題に対するゴールを設定しなければなりません。

人材開発の課題に対するゴールを設定することによって、具体的な研修内容を決めることができ、研修から成果を引き出すことが出来るのです。

研修の実施前に、依頼する人事担当者や教育担当者が、具体的な企画・設計方法を理解しておくことが重要です。以下では、研修を企画・設計する意味や方法を解説します。

最適な研修内容は人の数だけある

研修の企画・設計を進めていくには、課題に対するゴールの設定が重要です。例えば「営業スキルを得ること」をゴールとするのなら、一般的には「営業研修」を実施します。

研修会社では、ゴールにたどり着くための基本となる研修フォーマットを用意しています。この研修フォーマットに合わせて研修するのが、ひとつの基本です。しかし、これらのフォーマットはあくまで「一般的」な範疇に収まっているため、会社の業務内容や経営理念、社内の共通用語などに合わないケースがほとんどです。

そこで効果的な研修を進める際には、一般的なフォーマットの中から自社の体制・環境に合ったものを選定または再構築するプロセスが必要です。この選定または再構築する一連のプロセスが、研修の企画・設計に当たります。

多くの場合、研修会社に依頼する場合、まず一般的なフォーマットを軸に企画書を作り、ヒアリングなどで提供した内容を参考に、研修のゴール・コンセプト・カリキュラムを構成します。しかし、この初期段階の研修カリキュラムには、自社の課題にマッチしない要素が含まれているケースが多いのです。

新人の従業員は別として、既存の従業員にはこれまでの教育や経験で培ってきたものがあります。その内容を無視して研修を企画・設計すると、無益に混乱を招いて失敗する可能性が高まります。

そのため、「自社の人材開発の課題に対する最適な研修は人の数だけある」と言えます。

カリキュラムを修正して研修内容を企画・設計し直す

人事担当者や教育担当者は、研修会社が提供するカリキュラムをそのまま鵜呑みにするのではなく、自社の課題に合ったものを適宜選定、場合によっては研修のゴールも微調整するなどして、カリキュラムを修正して研修内容を企画・設計し直す必要があります。

研修会社も受講者も、それぞれが唯一無二の存在です。人材開発の担当者となったら、提案された企画書を確認して、不明点があれば必ず質問し、自社の人材開発の課題に対して、最適な形に研修内容を整備することが大切です。

「営業研修」をしてほしいと丸投げは禁物です。研修会社に依頼して任せていたらイメージとまるっきり違うものが上がってきて研修が行われてしまった、後戻りもできないとなりかねません。

このような事態にならないよう、研修会社の担当者と研修内容について、充分な共同作業を行うことが、人事担当者や教育担当者に期待される大きな役割となります。

具体的な研修内容が決まれば、あとは研修会場の確保や研修用のテキストおよび備品の用意など、研修本番に向けて準備をすることになります。

ゴールを決めるのは自分たちでしかできない

人材開発担当者として、やるべきことがだんだんと見えてきたのではないでしょうか。

研修の具体的な企画・設計は、研修会社と共同作業で形作ることができます。しかし、自社が目標とするゴールは、自分たちでしか決められません。人材開発の担当者がゴールを設定できていないと、研修の力点が間違った場所に置かれてしまい、成果を得られない可能性が高まります。

例えば、営業力を高める研修をしたい場合、「各個人の営業力を高める方法を学び、成果出したい」のと、「チーム全体の営業力を高める方法を学び、会社に根付かせて成果を出したい」のでは、研修内容が大きく変化します。

前者の方は、新入社員~若手向けの研修として、まずは営業の基本を学び、各個人の顧客に対するコミュニケーション力や提案力を向上させる内容がメインとなるでしょう。

後者の方は、中堅社員~管理職向けの研修として、顧客だけでなく、部下の目標管理や案件管理の手法、コーチングやティーチングの技術を学び、マネジメント力を向上させる内容がメインとなるケースもあります。

どちらも営業力を高めるための研修ですが、何を研修のゴールに設定するかで、研修内容や力点が変わってきます。

そのため人材開発の担当者には、人材開発のゴールを明確に研修会社に伝えて、共同作業を開始するきっかけを作り、力点の置きどころを考える役割が求められます。

考えているゴールを研修会社に伝えて、現時点での人材育成の課題を「共同作業」で掘り下げて、研修が最適な方法であることを確認し、そのうえで企画・設計を構築していくことが、重要なプロセスとなります。

前章で「とりあえず研修をする」という考え方は避け、「人材開発に研修が必要だと自信を持って答えられる時に研修を企画する」べきとお伝えしました。今一度その点を考慮し、人材開発のゴールについて考えて、研修内容とその力点を見極めることが、人材開発の担当者が担うべき仕事です。

まとめ

研修を企画・設計するということは、「人材開発の担当者が、人材開発のゴールを明確に定めて、人の数だけある研修の中から、最適な研修カリキュラムを選定または再構築すること」です。

人材開発を計画するには、研修内容の企画・設計が重要です。研修会社が初期段階で提示する一般的なフォーマットで作られた研修カリキュラムは、自社の環境や目的に合わない可能性が高いため、研修内容と力点を見極め、微調整するようにしましょう。

次の章では、「研修の企画は誰に何を依頼すればいいの?」というテーマを解説します。